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植生学会誌
Vol. 23 (2006) No. 2 p. 89-103

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http://doi.org/10.15031/vegsci.23.89

原著論文

  1. 複断面化した高燥な砂礫堆上でアキニレが分布を拡大している一方で,エノキとムクノキの分布拡大がみられない要因を明らかにするため,高知県物部川の砂礫堆上で各種の実生と稚樹の定着立地の調査を行い,また実験室内で種子の発芽実験,圃場で実生の定着実験と成長実験を行った.
  2. 砂礫堆上での3種の実生・稚樹の定着立地は異なっていた.アキニレの種子は,裸地や草本群落内で多くの実生・稚樹が確認された.エノキとムクノキの実生・稚樹は,木本群落内で多くの個体が確認され,裸地や草本群落内では定着個体が少なかった.このことは,アキニレの種子は風散布型であるのに対して,エノキとムクノキの種子は鳥散布型であることが影響していると考えられた.
  3. アキニレとムクノキの種子は一次休眠性がなく,乾燥状態で保存した種子の発芽も可能であった.一方,エノキの種子は一次休眠性があり,湿潤状態で保存された場合にのみ休眠が解除されることから,高燥立地で発芽できる可能性は低い.
  4. アキニレの種子は扁平で接地した面から幼根を伸長させ,高燥な立地での定着も可能であると考えられた.一方,エノキの種子では上や横向きに発芽する個体もあり,これらは乾燥によって幼根が損傷を受けて定着は困難であった.
  5. 3種とも,実生期の生存率は乾燥条件下で低いものの,生残できた個体の成長は良好なことから,高燥な砂礫堆上でも生育が可能である.
  6. 以上のことから,アキニレは高燥な砂礫堆に侵入し,発芽・定着して成長していくうえでの阻害要因が少ないので,早く分布を拡大することが可能であるが,エノキとムクノキは,種子の散布と発芽,実生の定着の段階で制限や阻害を受けると考えられ,高燥な砂礫堆上での大規模な侵入・定着は観察されないと考えられる.

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