2006 年 23 巻 2 号 p. 119-136
1. スギ,ヒノキ,サワラのいずれかが植栽された人工林において,植物社会学的方法による植生調査を行った.
2. 表操作法に基づく群落区分の結果,6つの種群によりスギ-フモトシダ群落,スギ-ドクダミ群落,スギ-ヘビノネゴザ群落,スギ-アオダモ群落の4群落に区分された.
3. 人工林群落と自然林との分布域の対応関係をみたところ,スギ-フモトシダ群落は,WI≧120℃・monthのスダジイ-ホソバカナワラビ群集の成立域を中心に分布しており,スギ-ドクダミ群落は,100℃・month≦WI<120℃・monthかつMTCM≧2℃のスダジイ-ヤブコウジ群集の成立域を中心に,スギ-ヘビノネゴザ群落は,85℃・month≦WI<100℃・monthかつMTCM<2℃のウラジロガシ-サカキ群集の成立域を中心に分布していた.スギ-アオダモ群落はWI≦90℃・monthの暖温帯と冷温帯との移行域を中心に分布していた.
4. 各群落の出現種の生活形を比較した結果,常緑木本はスギ-フモトシダ群落,スギ-ドクダミ群落に多く,落葉木本はスギ-フモトシダ群落スギ-ドクダミ群落,スギ-ヘビノネゴザ群落,スギ-アオダモ群落の順に多くなっていた.
5. 各群落に出現する他の植生単位の標徴種,識別種の平均出現種数の割合を比較した結果,ヤブツバキクラスおよびその下位の植生単位の標徴種,識別種はスギ-フモトシダ群落やスギ-ドクダミ群落に多く,ブナクラスおよびその下位の植生単位の標徴種,識別種はスギ-ヘビノネゴザ群落やスギ-アオダモ群落に多い傾向がみられた.
6. 人工林にはアカマツ-コナラクラスの標徴種,識別種も多数出現したが,コナラ二次林で比較的多いとされているススキクラスの種はほとんど出現せず,この点がコナラ二次林との種組成の違いであると考えられた.
7. 人工林の構成種には,森林性の種のほかに,林縁性の種が多数含まれており,これらの種の存続には人工林の施業が影響していると考えられた.