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植生学会誌
Vol. 24 (2007) No. 1 p. 19-28

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http://doi.org/10.15031/vegsci.24.19

原著論文

ハマボウはアオイ科の落葉低木で,関東地方南部以西の本州,四国,九州と韓国済州島に分布し,河口付近や入り江などの塩湿地やその周辺に生育し,純群落を形成する.近年は河川改修や埋め立てなどによって生育地が少なくなり,個体群が孤立化したり,群落が縮小化している.本研究はハマボウの花と果実の形質を調べ,個体群多様性の重要性を明らかにする目的で行ったものである.調査は長崎県の西彼杵半島の東側に位置する大村湾沿岸の5つの個体群と,外海側に位置する半島の西側の4つの個体群を対象に行った.各個体群から5つの個体をランダムに選び,計45個体について,各個体から30ずつの花と果実を採集し,形質を調べ,比較した.測定した形質は,花弁長,花弁幅,花柱長,葯-柱頭距離,葯-葯距離,雄蕊数,果実長,果実径,1果実あたりの潜在的な種子数(胚珠数)である.その結果,同一個体群内において各個体はそれぞれ特徴的な形質をもっているが,形質によっては差がないものもあった.しかし,個体群間ではすべての形質において差が認められた.大村湾側個体群と外海側個体群とを比較すると,大村湾側個体群の方が,花弁長,花弁幅,葯-葯距離,果実長,果実径,1果実あたりの潜在的な種子数において値が小さかったが,葯-柱頭距離は値が大きかった.また,花柱長と雄蕊数は有意な差はなかった.大村湾は超閉鎖性の湾で,約7000年前に湖と海とが繋がり,海水が流入して成立したもので,海水が外海から流入した際に,湾外のハマボウが侵入し,大村湾側に拡がっていったものと考えられ,現在は隔離状態にある.大村湾側の個体群の形質の特徴は,ポリネーターが豊富な環境の下で,自花受粉をさけるように進化した可能性を示している.ハマボウ群落の保全や植生復元には,個体群レベルで考慮する必要があると考えられる.

Copyright © 2007 植生学会

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