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植生学会誌
Vol. 24 (2007) No. 1 p. 53-63

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http://doi.org/10.15031/vegsci.24.53

原著論文

九州東・南部に生育するブナ科アカガシ亜属の7樹種について,既存の植生資料と一部の原調査資料の解析により生態的な分布の特徴を明らかにした.標高傾度に沿ったそれぞれの樹種の分布解析,およびクラスター分析を用いた出現傾向の類似性の解析により,常緑カシ7種は高標高型4種(アカガシ,ウラジロガシ,シラカシおよびツクバネガシ)と低標高型3種(イチイガシ,アラカシおよびハナガガシ)の2つのグループに分けられた.アカガシは最も高標高域に分布し,斜面上部に偏って分布する傾向が認められた.ウラジロガシは7種の中で最も出現頻度が高かった.また,分布の標高幅も広く地形的な分布の偏りも認められないことから,7種の中では最も普遍的に出現する種と特徴付けられた.シラカシは前2種よりやや低標高に分布し,地形的な分布の特徴は検出できなかったが,調査対象地域内では内陸部に分布が集中した.ツクバネガシはシラカシと同様な標高分布を示したが,低標高域において斜面下部への分布の偏りが顕著であり,一種の渓畔要素となっていることが示唆された.低標高型3種のうち,アラカシはウラジロガシと同様に地形的あるいは地理的な分布の偏りがみられなかったが,種間クラスター分析では先駆種や雑木林などを生育場所とする落葉木本種と同じクラスターを形成し,攪乱に依存した性格が7種の中で突出していることが伺われた.イチイガシは,低標高の照葉樹自然林の標徴種群と同様の出現傾向を示し,地形に対する偏りも比較的弱かった.これに対してハナガガシは,最も低標高域に分布が限られ,地形的にも斜面上部での生育はほとんど認められなかった.

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