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植生学会誌
Vol. 24 (2007) No. 2 p. 113-121

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http://doi.org/10.15031/vegsci.24.113

原著論文

  1. ブナの稚樹の空間分布と林冠木の状態との対応を調べるために,北海道南西部のブナ天然林において設定した1haの方形区を5m×5mのグリッドに400分割し,各グリッドに出現したブナの稚樹を数えた.グリッドは上部の林冠の状態により,「ギャップ下」,「ブナ樹冠下」および「ブナ以外の樹冠下」の3タイプに区分した.
  2. 方形区内に存在した稚樹は,高さが10-50cmの稚樹で686本,50-100cmの稚樹で683本であったが,どちらもブナ以外の樹冠下に集中していた.
  3. 林冠木は,4月17日にはどの樹種も未開葉であったが,5月23日にはブナのみが展葉を完了し,他の樹種は開葉していなかった.7月10日にはすべての林冠木が展葉を完了していた.
  4. 林床の相対光量子束密度(rPPFD)は,林冠層のブナのみが開葉した5月23日には,ブナ樹冠下でギャップ下に比べて大きく減少していた.しかし,開葉が始まっていないブナ以外の樹冠下ではギャップ下と大きな違いはみられなかった.
  5. ブナの稚樹がブナの樹冠下で少なかったのは,ブナ林冠木の展葉が他の広葉樹よりも早いため,全天条件で生育した場合に比べて成長が抑制されるためと考えられた,一方,開葉の遅いブナ以外の広葉樹の樹冠下では,ブナの林冠木が開葉を完了させた時期においても,ブナの稚樹は被陰を受けないので成長が抑制される程度が少ないと考えられた.
  6. ブナ以外の樹冠下では生育期間の前半に閉鎖し,以降の林床は被陰下におかれるので強光を通年で要求する先駆種は生育できない.このため,ブナの稚樹が独占的に利用できる生育立地と考えられた.

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