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植生学会誌
Vol. 25 (2008) No. 2 p. 75-93

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http://doi.org/10.15031/vegsci.25.75

原著論文

  1. 韓半島東南部と九州北部,および周辺島嶼の済州島,鬱陵島,対馬の5地域において,自然性が高い森林群落の種組成と垂直分布を比較し,地域間の森林植生帯の構造と種組成の類似性,異質性について検討した.
  2. 1204の植生調査資料を用いて地域ごとに組成表を作成し,28群落を識別した.区分された群落の組成的関係を地域間で整理したところ,地域ごとの独自の種群と,いくつかの地域にまたがって出現する種群の存在,さらに落葉および常緑フロラからなる種群の対立が,群落の分化に関わっていた.特に鬱陵島は多くの固有種を含んでいることから群落の独立性が高かった.また,韓半島と九州北部・対馬との間で大きな組成的違いがみられたが,済州島では高海抜地は韓半島と,低海抜地は九州北部や対馬との共通種群をもっていた.
  3. 調査地域内での垂直的な森林植生帯は,常緑広葉樹林から落葉広葉樹林,常緑針葉樹林へと推移することで基本的には共通していた.
  4. 低地の常緑広葉樹林では,スダジイ優占群落が済州島,九州北部,対馬に,タブノキ優占群落が全地域に分布していた.いずれも北上するにしたがって群落構成種が欠落し,種組成が単純化していた.
  5. 丘陵帯の常緑広葉樹林では,アカガシ優占群落とモミ優占群落が九州北部や対馬に特徴的であり,明瞭な森林帯を形成していた.しかし,韓半島ではこれにあたる植生帯が欠けていた.
  6. 山地帯の落葉広葉樹林では,韓半島と済州島でコナラ亜属のモンゴリナラとコナラが優占種となるのに対して,鬱陵島と九州北部ではブナ属のタケシマブナ,ブナが優占していた・また韓半島では山地帯上部にトウシラベの優占群落が出現し,モンゴリナラとともに針広混交林となって植生帯を構成していた.
  7. 調査地域内では,典型的な亜高山帯針葉樹林はみられなかったが,済州島のチョウセンシラベ優占群落は,日本の亜高山帯針葉樹林に比較的近い種組成をもっていた.
  8. DCA法による群落の序列化では,各地域の常緑広葉樹林は第1軸において低い値の領域にまとまって配置され,種組成が類似していることが示された.それ以外の森林群落では,地域ごとに大きく離れて配置され,地域内の植生帯間の差異よりも,地域間の同一植生帯どうしの差異のほうが大きかった.地理的に離れて分布する高海抜地域の群落ほど,固有種を含む独自の種群が群落構成要素に加わり,地域間の違いが大きくなっていた.
  9. DCAの第1軸は,WI,CI,降水量のほか,気温年較差とも相関があった.すなわち,落葉広葉樹林帯より上部での群落の組成的差異は,海洋性気候から大陸性気候への傾度と対応していた.

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