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植生学会誌
Vol. 26 (2009) No. 2 p. 89-102

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http://doi.org/10.15031/vegsci.26.89

原著論文

  1. ウラジロモミの更新様式を明らかにするため,本州中部の奥鬼怒地域において異なる立地に調査区を設置し,林分構造,ウラジロモミの実生,稚樹の個体密度と立地環境を調査した.
  2. 毎木調査の結果,ウラジロモミの個体密度が高く,連続的な胸高直径階分布を示す林分と,個体密度が低く不連続的な分布を示す林分が見られた.前者は河川攪乱後の遷移初期の林分や山腹の岩塊斜面,後者は比高の高い段丘面や山腹の緩斜面であった.
  3. 各調査区でウラジロモミの稚樹密度を調べた結果,連続的な胸高直径階分布を示した地点は稚樹密度が高かったのに対し,不連続的な分布を示した地点は稚樹密度が低く,ウラジロモミが定着しにくいと考えられる.
  4. 調査区を5×5mの方形区に区分し,ウラジロモミ稚樹密度と土壌深との関係を検討した結果,ササ類の被度が低く,土壌深が浅い方形区で稚樹密度が高い傾向が見られ,ササ類の被覆と土壌攪乱がウラジロモミの定着に関与していると考えられる.
  5. 氾濫原では洪水に伴い,急勾配の斜面では土壌の移動や根返りに伴い土壌攪乱が生じ,ササ類などの定着阻害要因が除去されることによってウラジロモミが定着できるのに対し,緩傾斜地のように土壌攪乱が生じにくい立地では,台風による倒木と根返りに伴い,ウラジロモミの定着サイトが生じると推察される.
  6. ウラジロモミは土壌攪乱に伴って定着し,長期間林冠で優占することから,"Long-lived seral species"に相当すると考えられる.一方,「岩塊斜面」のような立地において,本種は連続的に更新することから,岩塊地における土地的極相種としての性格も併せ持つ樹種であると考えられる.

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