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植生学会誌
Vol. 27 (2010) No. 1 p. 21-33

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http://doi.org/10.15031/vegsci.27.21

原著論文

  1. 自然林と都市林で異なった挙動を示す先駆性高木種イイギリについて,代表的な都市林で,現在は人為的管理が極力排されている東京都港区の国立科学博物館附属自然教育園において,1965年から長期モニタリング調査を行い,本種の動態を都市林の変遷と関連づけながら考察した.
  2. 自然教育園内全域で生育するイイギリ(胸高直径10cm以上)の個体数は,1965年から1983年の間は急増したが,以降は微増にとどまり,2002年から2007年の間は減少した.一方,胸高断面積合計は1965年から2007年まで増加し続けた.イイギリの胸高直径階別個体数分布は,1965年から1992年にかけては一山型,1997年以降は不明瞭なピークが複数現れていた.
  3. 優占型やイイギリの侵入形態が異なる6ヵ所に調査区を設置し,サイズ構造,樹冠の変化,一部の個体の樹齢の推定を行った.イイギリは侵入パターンによらず一度林冠に達すると枯死しにくく,周辺個体の枯死を機に樹冠を拡大させながら勢力を維持し続けたものと考えられる.
  4. 自然教育園に現在生育しているイイギリの多くは戦前(1917年)からあった母樹,戦後自然教育園となってから定着したもの,1964年の高速道路建設のころに定着したものが認められた.自然教育園は戦前の火薬庫としての利用がなくなった後は,放置あるいは保護されている期間と,大きな攪乱を受ける時期を繰り返していた.このことは,更新に大きな攪乱を必要とする一方で,定着した個体の損傷に対する耐性が低いため成長には安定した立地を必要とするイイギリにとって有利だったと考えられる.放置・保護による適度な安定期と時々人為による大きな攪乱が繰り返し起こったような歴史的経緯は他の都市林からも報告されていた.
  5. 攪乱により侵入の機会を得た先駆性高木種の中でイイギリは,アカメガシワのように最大樹高が低いといった不利な種特性や,ミズキやキハダのような一斉枯死もなく,都市林で徐々に個体数を増やしていったものと考えられる.

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