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植生学会誌
Vol. 27 (2010) No. 2 p. 73-81

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http://doi.org/10.15031/vegsci.27.73

原著論文

  1. 東日本太平洋側の落葉広葉樹林において,カバノキ林は二次林とのみかたが一般的であったため,林分が形成される立地環境や維持機構についての研究は少なかった.そこで,ヤエガワカンバ,シラカンバ,ミズメのカバノキ属樹木3種の林分からこれらを検討した
  2. 埼玉県外秩父山地の高篠山北側斜面を調査地として,相観植生とカバノキ属樹木の個体分布の調査を行った.さらにカバノキ林と外秩父山地の主要植生となるコナラ林において,土壌と斜面傾斜の調査,毎木調査を行った.
  3. カバノキ林は,斜面中腹の地表攪乱に由来する土砂礫が堆積する区域にパッチ状に分布していた.コナラ林は,地表攪乱が無く腐植土が厚い平坦地を中心に広く分布していた.
  4. カバノキ林とコナラ林を比較すると,カバノキ林はカバノキ属樹木の優占度が12.3%から33.0%であり,コナラの優占度が低く,多様な樹種により構成されていた.コナラ林はコナラの優占度が60.0%以上となり,出現種数は少なかった.
  5 成長段階ごとのカバノキ属樹木の個体分布をみると,カバノキ林内では樹高12m以上の成木に個体が集中し,幼樹はみられなかった.稚樹や当年実生の分布をみても,成木の直下では少なく,カバノキ林と他の林分や人為的開放地との境界付近にみられた.
  6. カバノキ林の形成には,比較的近年に発生した斜面崩壊による地表攪乱が関与していることを指摘した.斜面崩壊により土砂礫が堆積する開放地が出現し,そこに先駆種であるカバノキ属樹木がいち早く侵入することでカバノキ林が形成されたと考えられる.
  7. カバノキ林は,カバノキ属樹木の個体寿命より早い周期で地表攪乱が発生することにより維持されると考察した.カバノキ属樹木は,後継樹により林分内で順次更新しているわけではなく,地表攪乱による開放地の出現で一斉に更新している可能性が高い.地表攪乱については,高篠山では基盤岩の地形形成特性により数十年周期で斜面崩壊が発生している.斜面崩壊により開放地が出現するたびに,カバノキ属樹木は一斉に侵入して林分を形成していると考えられる.したがって,カバノキ林は将来にわたり維持されると結論付けた.

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