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植生学会誌
Vol. 29 (2012) No. 1 p. 1-13

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http://doi.org/10.15031/vegsci.29.1

原著論文

1. 淡路島の森林伐採跡地(皆伐前の植生はウバメガシ群落)とその周辺部において各種の調査を行い,外来木本ナンキンハゼの逸出状況とその優占群落の生態的特性を明らかにすると共に,ナンキンハゼ群落の成立に必要な要因について検討した.
2. 約4haの範囲を対象にナンキンハゼの逸出個体(樹高1m以上)の空間分布を調査した.伐採跡地には1118個体が分布していたが,伐採跡地に隣接するウバメガシ群落にはまったく分布していなかった.また,優占群落が確認された場所は植栽個体から100m以内に位置していた.
3. 伐採跡地ではウバメガシ群落の主要構成樹種であるウバメガシ,コナラ,ネズミモチ,マルバアオダモなどや暖温帯の代表的な先駆性樹種であるアカメガシワ,タラノキ,カラスザンショウなどがほとんどみられなかった.この主な原因はニホンジカによるこれらの種の食害であると考えられた.
4. 調査地のナンキンハゼ群落の主な成因は, 1) ウバメガシ群落の皆伐によってまとまった面積の陽地が形成されたこと, 2) 伐採跡地の近傍(100m以内)に種子供給源があったこと, 3) ナンキンハゼの競合種の定着と成長がニホンジカの採食によって阻害されたことであると考えられた.
5. ナンキンハゼ群落と在来植物群落(コシダ群落,ウラジロ群落,裸地群落,ウバメガシ群落)に1m^2の調査区を合計94個設置して植生調査と土壌調査を行った.これらの調査結果を群落間で比較したところ,裸地群落ではニホンジカの影響による表土の流亡が認められたが,ナンキンハゼ群落の表土はウバメガシ群落のそれとよく似ていた.一方,種多様性(1m^2あたりの種数)は全種,在来種ともにナンキンハゼ群落が最も高く,他の群落との差は大きかった.ナンキンハゼの優占はニホンジカの採食による表土の流亡と種多様性の低下をある程度抑制していることが示唆された.
6. 逸出個体の最大樹高は7.6mであったが,植栽個体のそれは19.0mであった.また,逸出個体では樹高成長の頭打ちは認められなかった.これらのことは,ナンキンハゼ群落が今後も成長を続け,長期にわたって持続する可能性が高いことを示唆している.このような事態の発生は生態系保全上の様々な問題を引き起こす可能性があると考えられた.

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