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植生学会誌
Vol. 30 (2013) No. 1 p. 51-69

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http://doi.org/10.15031/vegsci.30.51

原著論文

1. 兵庫県北部に分布する3タイプの畦畔法面草原,すなわち1)棚田の畦畔法面草原(以下,伝統型草原),2)管理が放棄されている伝統型草原(以下,放棄型草原),3)圃場整備水田の畦畔法面草原(以下,整備型草原)を対象に植生調査を実施し,各草原タイプの階層構造,優占種,種組成,種多様性(調査区あたりの出現種数)を比較した.
2. 伝統型草原と整備型草原は平均群落高が0.5m前後でチガヤが優占していたが,放棄型草原は平均群落高が2.0m(最大値は2.7m)でススキが優占していた.
3. DCAによって得られた調査区のスコアとWI,傾斜角度,斜面方位の相関係数は1軸,2軸ともに低かった.また,DCAの1軸スコアと2軸スコアから構成される座標平面上では各草原タイプはそれぞれ独自の領域に分布していた.これらのことから,3草原タイプの種組成の相違には管理放棄と圃場整備が大きく関係していると考えられた.
4. 放棄型草原では伝統型草原の構成種が数多く欠落する傾向にあった.また,種多様性は伝統型草原の方が放棄型草原よりも有意に高く,その差は大きかった.
5. 整備型草原は伝統型草原よりも種組成が単純で種多様性も低い傾向にあった.全種数に対する外来種数の比率は整備型草原の方が伝統型草原よりも高かったが,外来種数は両草原タイプともに少なく有意な差は認められなかった.
6. 一年生草本の種多様性は伝統型草原と整備型草原の間でよく似ていたが,多年生草本の種多様性は伝統型草原の方が整備型草原よりも明らかに高かった.
7. 路傍草本の種数を伝統型草原と整備型草原の間で比較したところ,両草原タイプ間の差は一年生草本,多年生草本ともに小さかった.また,伝統型草原を構成する一年生草本の大半は路傍草本であった.これらのことから,一年生草本の種多様性が圃場整備後に復元しやすい理由の一つは,整備型草原の周囲に存在する路傍が整備型草原に対する一年生草本の種子供給源として機能しているからと考えられた.
8. 放棄型草原の調査地から採取した土壌サンプルをもとに実生出現法による種子発芽実験を行った.埋土種子から発芽した種は71種であったが,このうち伝統型草原に出現した種は38種であった.
9. 放棄型草原で欠落する傾向を示した伝統型草原構成種48種のうち,埋土種子から発芽した種は17種にすぎなかった.このことから,放棄型草原の管理再開による伝統型草原の種組成の復元に埋土種子集団が寄与する程度は小さいと考えられた.

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