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植生学会誌
Vol. 31 (2014) No. 1 p. 19-35

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http://doi.org/10.15031/vegsci.31.19

原著論文

  1.性状の異なる地質が上下に重なり合う場所において,斜面上側の地質が下側の地質の植生分布に及ぼす影響を明らかにするために,基盤の花崗岩上を堆積層が階層上に分布して,最上位を讃岐岩質安山岩がキャップロックとして覆う,開析溶岩台地の分布する香川県土庄町豊島を対象に調査を行った.
  2.豊島の地質・地形は島の東西で異なり,讃岐岩質安山岩域の分布しない西側(W区)では風化の進行した花崗岩に広く覆われて,尾根・谷のはっきりした,集水面積指数が小さな場所が密に分布するが,讃岐岩質安山岩域の分布する東側(E区)は花崗岩の上に土庄層群・讃岐層群が水平に重なり,尾根・谷のはっきりしない崖錐斜面が形成されて,集水面積指数の大きな場所が広く分布していた.また,両区域の花崗岩のみについて比較しても,W区がE区よりも集水面積指数が小さい場所が多く,傾斜角度の緩やかな場所が多かった.
  3.植物群落の分布はW区とE区で異なり,W区ではネズ-アカマツ群落が最も多く,コナラ群落は少ないが,E区では逆にネズ-アカマツ群落が少なく,コナラ群落が最も多かった.花崗岩域のみで比較しても,W区ではネズ-アカマツ群落が多く,コナラ群落が少なかった.
  4.1982年にアカマツ群落であった箇所について2002年の植生型を調べたところ,アカマツ群落(ネズ-アカマツ群落含む)が残存していた箇所はW区が約76%と多く,E区では約44%であり,コナラ群落に変わった箇所は,W区が約7%と少なく,E区では約36%と多かった.花崗岩域のみで比較すると,W区ではE区に比べてアカマツ群落の残存箇所が多く,コナラ群落に変わった箇所が少なかった.
  5.主な二次林の群落型と地形属性と土壌との対応についてみたところ,ネズ-アカマツ群落,アカマツ群落,コナラ群落・クスノキ群落の順で後者ほど集水面積の広い場所に分布し,ネズ-アカマツ群落・コナラ群落,アカマツ群落,クスノキ群落の順で後者ほど緩傾斜地に分布し,ネズ-アカマツ群落,アカマツ群落,コナラ群落,クスノキ群落の順で後者ほど表層土壌中に細粒分が富む場所に分布する傾向が認められた.
  6.表層土壌の粒径は花崗岩域で大きく讃岐岩質安山岩域,塩基性凝灰角礫岩域,土庄層群域では小さかった.同じ花崗岩域であってもE区においてはW区よりも表層土壌中に細粒分が多く,また,讃岐岩質安山岩を含む斜面上側の地質の風化物が混入していた.
  7.これらのことから,豊島においては島の西側のW区と東側のE区で植生構成が異なるのは,まず,西側では花崗岩のみからなり,粗粒の表層土壌が卓越するのに対して,東側では花崗岩に加えて讃岐岩質安山岩域などの細粒の表層土壌を生成する地質域が広く分布すること,次に,東側では硬質の讃岐岩質安山岩がキャップロックとして山体全体を覆うことにより山体下部の開析が進まず,西側に比べて集水域の広い地形が卓越すること,さらに,東側では集水域の斜面上部から細粒の風化物が移動して花崗岩域の表層土壌に付加されたこと,などによって,西側では東側に比してより乾性な立地が広い範囲を占め,これにより乾性立地と結びついたネズ-アカマツ群落の分布がより広くなったためだと解釈された.
  8.性状の異なる地質が立体的に配置している際,個々の地質はその地質域の立地条件に影響するだけでなく,侵食・開析の受けやすさ,土壌粒子の移動などを通じて下方に隣接する別の地質域の立地条件にも影響を及ぼし,そこに成立する植生の種別を規定することがわかった.

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