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植生学会誌
Vol. 31 (2014) No. 1 p. 85-94

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http://doi.org/10.15031/vegsci.31.85

短報

1.北海道札幌市北区篠路町福移に残存する退行遷移の進行した泥炭地湿原で,分解の進んだ表層泥炭の除去(地盤掘り下げ)による植生再生が可能かどうかを試験した.2000年秋にササ群落とヌマガヤ群落内に試験区(2m×6m)を設け,それぞれ3等分し,地剥ぎ(刈り払い),地表から20cm,地表から30cmの泥炭を排除した後,2001年から2008年まで毎年夏季に植生調査を行った.
2.地剥ぎ区は地下部から植物が再生し,処理翌年から植被率が高かったが,ヌマガヤ区,ササ区ともに周辺で見られないオオイヌノハナヒゲ,ミタケスゲなど湿性の種も出現した.
3.掘り下げ区ではいずれもチマキザサは出現せず,現植生とは異なる群落が成立した.ヌマガヤ20cm掘り下げ区では,オオイヌノハナヒゲ,ムジナスゲの発芽・成長にともない,植被率が上昇した.ササ20cm掘り下げ区では,経年とともにアブラガヤ,オオイヌノハナヒゲ,ミタケスゲ,ヤチヤナギの被度が上昇した.30cm掘り下げ処理区は,冠水状態の年が多く,出現種数は少なく,植被率は2003年まで1%未満であった.ヌマガヤ30cm掘り下げ区では,2006年からムジナスゲの被度が上昇し,2007年には植被率が40%になった.ササ30cm掘り下げ区では,2004,2005年にタヌキモが繁茂したが,2006年以降激減し,2002年に発芽したホタルイや2006年に発芽したフトイ,ヨシなどの被度が高くなった.
4.試験区では1998年の篠路湿地の植物相調査で確認できなかった種や,試験区を設置した元の群落には出現していない種が見られた.これらの出現種の多くは埋土種子から発芽したと考えられた.
5.試験結果から,劣化した泥炭地湿原で導水が見込めない場合,20cm程度の泥炭の排除によってササなどの根茎を取り除き,相対的に地下水位を高めることが,現植生より湿性の群落の成立に有効と考えられた.ただし,出現する種は限られており,高層湿原植生の復元は困難であった.

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