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植生学会誌
Vol. 31 (2014) No. 2 p. 165-178

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http://doi.org/10.15031/vegsci.31.165

原著論文

1. ニホンジカ(以下,シカ)の生息密度が高い兵庫県朝来市では,中国原産の落葉高木であるニワウルシが夏緑二次林とスギ人工林の伐採跡地に逸出し優占群落を形成している.本研究では,このようなニワウルシ群落の種組成,構造,主な成因を明らかにすると共に,ニワウルシ群落の今後の動態を予測することを目的とした.

2. ニワウルシは伐採跡地に数多く逸出し,夏緑二次林伐採跡地とスギ人工林伐採跡地のそれぞれで1000 m2 以上の優占群落を形成していたが,その隣接地に分布する夏緑二次林とスギ人工林の林内では樹高1.5 m 以上のニワウルシはまったくみられなかった.

3. ニワウルシ群落には在来の先駆性木本種や夏緑二次林の主要構成種がわずかしか生育していなかった.この主な要因はシカによるこれらの種の採食であると考えられた.一方,ニワウルシについてはシカの採食はまったく認められなかった.このことは,ニワウルシがシカの不嗜好性植物であることを示している.

4. ニワウルシ群落の主な成因は,1)夏緑二次林とスギ人工林の皆伐によってまとまった面積の陽地が形成されたこと,2)ニワウルシの競合種の定着と成長がニホンジカの採食によって阻害されたことであると考えられた.

5. ニワウルシ群落の上層(高さ1.5 m 以上)を構成するニワウルシのサイズ構造は一山型であった.また,年輪解析の対象としたニワウルシ(胸高直径1.6-15.0 cm)はいずれも2002-2005 年に侵入したものであり,夏緑二次林の伐採跡地に分布するニワウルシ群落では2006-2013 年に侵入したニワウルシの上層への加入がほとんど起こっていないことが示唆された.これらのことから,種子由来のニワウルシがニワウルシ群落の内部で持続的に成長・更新することは不可能であると考えられた.

6. 夏緑二次林の伐採跡地に分布するニワウルシ群落の内部には幼個体が数多く生育していた.これらの幼個体の発生由来を調査した結果,その大半は根萌芽由来であることが示唆された.このようなニワウルシのラメットバンクはニワウルシ群落の更新にある程度寄与しうると考えられた.

7. 調査地でみられたニワウルシの最大樹高は15.0m であったが,樹高成長の頭打ちは認められなかった.ニワウルシの最大樹高は20-30 m と報告されているので,調査地に生育するニワウルシの林冠木は今後も樹高成長を続け,いずれは林冠高が20-30 m に達するような高木林を形成する可能性が高いと考えられた.

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