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植生学会誌
Vol. 32 (2015) No. 1 p. 1-15

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http://doi.org/10.15031/vegsci.32.1

原著論文

1. 釧路湿原の温根内高層湿原においてエゾシカの影響とその駆動因を解明するため,空中写真から獣道(シカ道)を抽出し,2011-2012 年に現地で採食痕および植生調査を行った.植生調査では方形区をエゾシカの影響の多寡に合わせて設置し,さらにエゾシカの影響が小さかったと推定される2002-2004 年に同調査地で行われた既存の植生調査結果を加えて解析を行った.
2. 2004 年から2010 年にかけて温根内高層湿原において抽出したシカ道の密度は約4-8 倍に増え,エゾシカによる踏圧の増加が示唆された.一方,2011-2012 年の8 月下旬に植生調査を行った方形区では,その8 割以上で採食痕を発見できなかった.以上のことから,高層湿原が受ける影響は採食圧よりも踏圧の方が大きいと考えられた.
3. 2011-2012 年の調査で得られた植生調査結果は,modified TWINSPAN によってブルテのカラフトイソツツジ群落とシュレンケのミカヅキグサ群落に区分された.
4. 各群落において,エゾシカの影響の多寡に合わせて設置した2 種類の方形区群および2002-2004 年に同調査地で行われた既存の植生調査結果の間で,積算被度(生活形ごと)や種構成を比較した.その結果,矮性低木およびコケ植物の積算被度はエゾシカによる影響の大きい方形区で顕著に低下した.他方,多年生グラミノイドの積算被度は相対的に低下しにくいなど,エゾシカによる踏圧への耐性は生活形によって異なることが推測された.また,一年生草本のホシクサ属植物が,ブルテ・シュレンケ複合体においてエゾシカの踏圧・攪乱により形成された裸地に侵入し,エゾシカによる影響の大きい方形区で増加した.
5. エゾシカは高層湿原特有のブルテやシュレンケを破壊していた.特に微地形が破壊されたブルテのカラフトイソツツジ群落では,地形の回復に伴う植生の回復には長い時間を要すると推測された.

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