植生学会誌
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西宮神社の社叢として保全されている照葉人工林の種組成の特徴
石田 弘明黒田 有寿茂服部 保
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2015 年 32 巻 2 号 p. 123-129

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抄録

1. 兵庫県西宮市の市街地に位置する西宮神社の境内には,植栽由来のクスノキ(樹齢数百年)が優占する照葉人工林(以下,西宮神社林)が分布している.若齢の照葉人工林を対象とした研究はこれまでに数多く行われているが,西宮神社林のような高齢の照葉人工林を詳しく調査し,その種組成の特徴について検討した例はまだみられない.
2. 本研究では,西宮神社林の植物相調査と植生調査を実施し,これらの調査結果を周辺地域に分布する照葉自然林の調査結果と比較することで,本社叢の種組成の特徴を明らかにした.
3. 植物相調査の結果,西宮神社林では37 種の照葉樹林構成種が確認された. 周辺地域の照葉自然林に関する既往研究の結果(種数-面積関係を表わす2種類の回帰式)をもとに,西宮神社林の樹林面積から期待される照葉自然林の照葉樹林構成種数を推定したところ,西宮神社林の照葉樹林構成種数は照葉自然林のそれの69.8-72.4% であると推定された.また,西宮神社林と照葉自然林の植物相を比較した結果,西宮神社林では照葉自然林に生育する種が数多く欠落していた.これらのことから,西宮神社林は照葉自然林と比べて非常に単純な植物相を有していることが明らかとなった.
4. 植生調査のデータを解析したところ,調査区スケールの種組成は西宮神社林と照葉自然林の間で大きく異なっており,西宮神社林では照葉自然林の構成種が数多く欠落する傾向が認められた.このことから,西宮神社林の調査区スケールの種組成は照葉自然林のそれよりも明らかに単純であることがわかった.

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