J-STAGE トップ  >  資料トップ  > 書誌事項

植生学会誌
Vol. 32 (2015) No. 2 p. 69-80

記事言語:

http://doi.org/10.15031/vegsci.32.69

原著論文

1. 釧路湿原国立公園の湧水地において,新たにヌマハコベとカラフトノダイオウをそれぞれ優占種とする2 つの湧水辺植物群落の存在を認め,それぞれの種組成と立地を明らかにした.
2. 調査は方形区法に従い,均質な植分に大きさ1 m×1 m の調査区を設置し,方形区内の維管束植物と蘚苔類の優占度および群度を記録した.確認された2 群落について,釧路湿原に既知の群落であるカラフトノダイオウ-エンコウソウ群集と比較した.このほか方形区の位置情報や表面土壌状況の記録と水温測定を加え,2 群落の立地で典型的な1 地点の湧水地を選び,簡易測量によって地形断面図を作成した.
3. 2 群落には植物社会学的な植生体系上の上級単位であるオオバセンキュウ-タネツケバナ群団の標徴種であるオオバタネツケバナとオオバセンキュウが出現したので,両群落とも同群団に属すると判断された.しかしながら,群団標徴種の常在度がやや低いヌマハコベ群落は群団レベルの所属において検討の余地があると思われた.
4. カラフトノダイオウ群落は,オオバタネツケバナやオオバセンキュウが高常在度で出現する点で,北海道内の大雪山高根ヶ原や十勝三股のカラフトノダイオウが主体となる群落と類似のものであった.一方で,本報のカラフトノダイオウ群落は,釧路湿原に記録されたカラフトノダイオウ-エンコウソウ群集と比較すると,エンコウソウの常在度と優占度がやや低く, クサヨシ,ツリフネソウ,オオカサスゲが欠落したので,低層湿原植生に位置づけられた同群集とは異なると判断された.
5. ヌマハコベ群落の立地は,湧水が表面全体を浅く流れる砂の平坦面であったが,カラフトノダイオウ群落の立地は泥の緩斜面であり,両群落の立地は大きく異なっていた.同一の湧水地の範囲内であっても,湧泉と谷底面との比高差が小さい場所では前者の立地が形成され,比高差が大きい場所では後者の立地が形成されると考えられた.

Copyright © 2015 植生学会

記事ツール

この記事を共有