J-STAGE トップ  >  資料トップ  > 書誌事項

植生学会誌
Vol. 32 (2015) No. 2 p. 81-94

記事言語:

http://doi.org/10.15031/vegsci.32.81

原著論文

1. 北海道中央部ウトナイ湖北西岸において,ハンノキ林の侵入,成立過程を解明し,その要因を検討するために,幅5 m,長さ230 m から320 m の帯状区を5 か所設定し,地形断面を調査するとともに,生育する樹木個体の直径分布と齢構成も調査した.
2. 調査地区では,湖岸から300 m から200 m ほど内陸に向かった側で標高が3 m 程度の完新世段丘が位置し,それより湖岸側に向かってごく緩やかに傾斜したのちに,標高2.5 m から2.1 m の海岸平野が広がっていた.さらにこの平野上で湖岸からおよそ50 m から20 m の範囲には縄文海進時に形成された砂丘があり,標高約2 m の湖岸に達していた.
3. 各ラインの内陸端付近にはコナラを主体とする中生な立地の森林が分布し,それらは例外なく完新世段丘上であった.ハンノキ林は,ラインによって異なるものの,段丘面上でやや標高の低くなった湖岸側や海岸平野に分布しており,湖岸まで到達していた帯状区があった一方で,高茎湿生草原が残存している帯状区もあった.ハンノキ林内では,林冠個体以外に萌芽由来が主体となる多数のハンノキの小径幹があったものの,高さ2 m 未満の稚樹,実生は皆無であった.
4. 林冠層のハンノキの幹齢は内陸側の中生立地の森林に接する部分でやや古い傾向があったものの,段丘の斜面上や海岸平野ではどの帯状区でもそれぞれ20 から30 年程度の範囲内に収まっていた.その平均値は調査地区の中央部のラインC で約52 年と最も古く,この地域で開発による排水が開始されてウトナイ湖の水位低下が始まった1950 年代半ばに対応する可能性が考えられた.その一方で流入河川に近く,調査地区の縁に位置するラインA とE では林冠層のハンノキの幹齢は35 年ないし30 年程度に減少しており,排水が一段落して水位低下が落ち着いた1970 年代末とほぼ一致していた.
5. 既存資料によると,ウトナイ湖に流入する河川への土砂流入や堆積,水質の富栄養化は確認されていないことから,調査地域のハンノキ林は,水位低下による乾燥化が原因となってフェンや高茎湿生草原にハンノキ実生が定着し,その後に成林して形成されたものと推察された.また水位低下が終息している現在では,ハンノキ林の新たな拡大とハンノキ林自体の長期的jな維持の可能性は低いと判断される.

Copyright © 2015 植生学会

記事ツール

この記事を共有