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植生学会誌
Vol. 34 (2017) No. 1 p. 1-21

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http://doi.org/10.15031/vegsci.34.1

原著論文

トキの再野生化を目指す佐渡ヶ島では,トキの餌となる水生動物に影響が少ないように,農薬の成分回数(Σ各農薬成分×使用回数)を通常の50%以下にする特別栽培水田の稲作が推奨されてきた.こうしたことが水田に生育するイネ以外の植物にどのような影響を与えるかを調査した.調査は農薬を使用している慣行水田,特別栽培水田,農薬が使われていない放棄水田,さらに一部の畦で行い,ブラン-ブランケの手法で出現種とその被度・群度を記録し,それぞれの立地の特徴をみた.また,種の多様さの尺度として種の豊富さ(種数)とシャノンのH’を算出し,立地間で比べた.水田と畦を比べると,水田よりも畦のほうが種の豊富さ,多様性が高かった.また,放棄水田と慣行水田を比較すると,放棄水田の種の豊富さや多様性が慣行栽培水田より2倍から4倍高かった. また,特別栽培水田も,慣行栽培水田に比べ,種数や多様性が2倍から3倍高いものがあった.特別栽培水田は大佐渡山地と小佐渡山地の麓にあり,土壌は砂壌土であり,沖積平野にある慣行栽培水田の埴壌土に比べ水が抜けやすく,除草剤などの農薬も同時に抜けやすい.こうしたことが特別栽培水田で農薬の効果を低めた可能性がある.特別栽培水田では,放棄水田に次いで水生植物や湿地生植物の種数が多く,慣行水田の2倍から6倍程度で,被度も高かった.これは,中山間地の特別栽培水田では水路の多くがコンクリートのU字溝でなく,表面に植生を持つ土側溝で,水生植物や湿地生植物が多かったことに貢献している可能性が考えられた.こうしたことから,放棄水田や特別栽培水田がそうした植物種の生育の場としての役割を持っていることが考えられた.

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