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植生学会誌
Vol. 34 (2017) No. 1 p. 55-62

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http://doi.org/10.15031/vegsci.34.55

短報

1. 湿生植物のサワトラノオは稀少種として知られ絶滅危惧種に選定されているが,生育地の植生や生育環境に関する情報は乏しいため,生育地の植生を調査するとともに,過去の調査結果と比較して植生変動の要因を検討した.

2. 静岡県富士市の浮島ヶ原自然公園は放棄湿田を整備したもので,植生管理として冬季に湿地の草刈りを実施している.わが国で唯一の一般公開されているサワトラノオの自生地である当公園で,本種の生育地の植生調査を2014年5月から2016年5月にかけて実施し,調査結果を既存資料の約20年前の植生と比較した.

3. 5月のサワトラノオの生育地ではヨシとスゲ類が繁茂した.カサスゲ群集,オニナルコスゲ群落,チゴザサ-アゼスゲ群集が認められ,チゴザサ-アゼスゲ群集が生育地の主要な群落であった.10-11月にはヨシの草高が伸び下層にスゲ類やタデ類などが繁茂する2層群落になり,サワトラノオの地上茎は枯死して新ロゼットがわずかながら確認された.

4. 本研究の調査結果を1993-1994年の調査結果と比較すると,いずれの調査でもチゴザサ-アゼスゲ群集がサワトラノオの生育地の主要な群落であった.6地点において,サワトラノオが生育しない抽水植物群落がサワトラノオの生育するスゲ群落に変化していた.また既存資料でチゴザサ-アゼスゲ群集サワトラノオファシスとされた範囲において,植生変化とサワトラノオの消滅を確認した.

5. スゲ群落の拡大と草刈りの継続によりサワトラノオの生育可能な範囲が拡大したと考えられる.チゴザサ-アゼスゲ群集サワトラノオファシスの範囲でサワトラノオが消滅したのは,野鳥の保全対策として刈り取りを停止したことが主因の可能性が高い.

6. 開発による自生地の消失は各地でのサワトラノオの減少や消滅の主要な原因であったと思われるが,湿地の植物の利用と草刈りが廃れたために本種の生育地が消滅した事例もあったと推測される.

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