植生学会誌
Online ISSN : 2189-4809
Print ISSN : 1342-2448
原著論文
八ヶ岳東麓の湿地およびその周辺における樹木の空間分布と過湿条件下の土壌との関連
高久 朋子清野 達之菊地 亜矢子小川 政幸上條 隆志中村 徹
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2018 年 35 巻 1 号 p. 21-33

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抄録

1. 本州中部に位置する筑波大学八ヶ岳演習林内の湿地とこれに隣接する森林の樹木の空間分布形成パターンを明らかにすることを目的に,そのメカニズムに大きく関わっていることが予想される過湿な土壌環境との関連に注目した解析を行なった.調査区内の優占4種であるハンノキ・ズミ・ヤエガワカンバ・ミズナラについて空間分布と地下水位の高さ,土壌の還元状態との関係を解析した.

2. 解析の結果,ハンノキは地下水位が高く,かつ還元土壌上に偏って分布していた.ズミは,地下水位は高いが,還元状態ではない土壌上に偏って分布していた.ヤエガワカンバとミズナラは地下水位が低く,還元状態でない土壌上へ偏って分布した.

3. 2種間の空間分布の関係の解析により,ハンノキとズミ・ヤエガワカンバ・ミズナラ間は排他的な分布を示した.このような樹木の空間分布の特徴は,それぞれの樹種の過湿な土壌環境に対する耐性の有無と関連があると考えられる.その一方で,ズミとヤエガワカンバの小スケールでの同所的な分布には,両種間の垂直的な階層の分離が関係していることが推察された.

4. 本調査地における湿地およびその周辺における樹木の空間分布は,基本的に地下水位に代表される水分条件によって規定されるが,各樹種の最大到達サイズなどの相違に基づく競争関係・共存関係も空間分布パターンに影響していることが示唆された.

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