植生学会誌
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原著論文
口永良部島における照葉樹林の種組成,種多様性と表層地質の関係
石田 弘明矢倉 資喜黒田 有寿茂岩切 康二
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2018 年 35 巻 1 号 p. 35-46

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抄録

1. 口永良部島は屋久島国立公園およびユネスコエコパークに指定されている火山島である.この島の照葉樹林は安山岩質の溶岩原と火山砕屑物の堆積地に分布している.溶岩原では露岩が数多くみられるが,火山砕屑物堆積地では露岩はまったくみられない.しかし,表層地質の違いや露岩の多寡が照葉樹林の種組成や種多様性にどのような影響を及ぼしているのかは明らかとなっていない.

2. 本研究では,口永良部島においてスダジイの優占する照葉樹林(二次林)の植生調査を実施し,その種組成,種多様性と表層地質,特に露岩の多寡との関係を明らかにすることを目的とした.

3. 調査対象とした41林分の植生調査資料を用いてTWINSPANとDCAによる解析を行った.TWINSPANの結果,調査林分は4つの林分タイプに分類された.このうちの3タイプは溶岩原,1タイプは火山砕屑物堆積地に分布していた.

4. DCAによって得られた1軸のサンプルスコアと露岩率の間には順位相関係数で0.645(P < 0.001)というやや強い有意な相関が認められた.

5. 溶岩原の調査林分は火山砕屑物堆積地の調査林分よりも調査区(100 m2)あたりの出現種数が多い傾向が認められた.また,岩上を好んで生育する植物の出現種数と露岩率との間には順位相関係数で0.731(P < 0.001)というやや強い正の有意な相関が認められた.

6. 以上のことから,口永良部島では地質条件,特に露岩の多寡がスダジイ林の種組成,種多様性に大きな影響を及ぼしていること,また,溶岩原がスダジイ林の種多様性の保全にとって極めて重要な立地であることがわかった.

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