植生学会誌
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原著論文
異なる間伐手法がヒノキ人工林の下層植生の衰退および回復に与える短期的影響
岩切 康二伊藤 哲光田 靖平田 令子
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2019 年 36 巻 2 号 p. 43-59

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抄録

1. 間伐手法の違いが人工林内の草本種を含む下層植生の植物種多様性に与える短期的な影響を明らかにすることを目的に,連続したヒノキ人工林に点状間伐区(間伐率約35%の定性間伐),点状+列状間伐区(3残1伐の列状間伐と追加の定性間伐(全体として間伐率が約35%)),列状間伐区(3残1伐の列状間伐)および無間伐区を設定し,間伐前,間伐直後および間伐1年後の下層植生の状態を比較した.

2. 間伐試験の結果,間伐作業に伴い下層植生では植栽木の本数間伐率と同程度もしくはそれ以上の攪乱が発生していた.特に列状間伐を行った2調査区では,植栽木の本数間伐率以上に減少していた.一方,間伐による種数の減少には,間伐手法の違いによる明瞭な差異は認められなかった.

3.間伐1年後の時点で,草本層は被度および種数の両方で間伐前の水準,もしくはそれ以上に回復していたが,低木層では間伐1年後時点では間伐前の水準まで回復していなかった.草本層では被度および種数が回復していたが,間伐1年後の種組成は間伐前から変化していた.間伐後に消失した種の約56%が照葉樹林型種であったのに対して,再生した種では約24%,新規加入した種では約19%にとどまり,種組成では照葉樹林型種と二次林型・開地型種の入れ替わりが起きていた.

4.人工林低木層への侵入・定着に時間を要する照葉樹林型種(森林性植物種)の保全においては,高頻度の通常間伐で下層に何度も攪乱を起こすよりも強度の間伐によって一度で光環境を改善し長期的に維持することが効果的であると考えられた.一方,保全対象が草本層を中心とした二次林型・開地型種(里山種)の場合は,低頻度の強度間伐もしくは高頻度の通常間伐を行い,林床の明るい光環境を持続させることが望ましいと考えられた.

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