2020 年 37 巻 2 号 p. 109-116
1. 東日本大震災による津波の被害を受けた海岸防災林の再生事業地の,外来植物に対する選択的除草が行われている生育基盤盛土上のクロマツ植林において,植林後1から3年目までの植生の変化を追跡した.
2. 植被率は最大でも20%以下であり,年変動も小さかった.出現種は全調査期間を通じ62種類が確認されたが,3年間を通じて出現した種類はその半数以下であり,入れ替わりが激しかった.
3. 外来植物の種数は総出現種数の30-40%を占めたが,植被率は調査期間を通じ最も高い種で3%以下であった.
4. 3年間の調査期間中に,多年草の増加のような明瞭な遷移の方向性は検出されなかった.ただし,種の入れ替わりは観測され,気象条件など調査区画全体にかかわる要因の影響を受けて構成種が変化した可能性が示唆された.
5. 木本種や海岸生の種は少なく,調査期間中には新たな進入がほとんどなかった.これらの種群については散布体の供給制限が疑われた.
6. 東北地方太平洋沖地震に伴う海岸防災林再生事業による生育基盤盛土は,宮城県仙台湾沿岸から福島県相双地域の広い範囲で行われており,地域間での状況の違いが予想されるため,広域でのモニタリングが望まれる.