植生学会誌
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原著論文
日本の海浜植生の分類における伝統的手法と自動化手法の比較
阿部 聖哉
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2021 年 38 巻 1 号 p. 67-80

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抄録

近年,大規模な植物社会学的調査データが世界中で収集され,データベースとして様々な目的に活用されている.日本でも,植生図の作成に伴って収集された植生調査データがデータベースとして公開されている.こうした大規模な植生データベースを分類する際に,従来の植物社会学的な表操作では多くの時間と労力を要していた.本研究では.日本の海浜植生を分類するために,最近開発された自動化アプローチであるISOPAMを適用し,伝統的な手法による分類と比較した.従来の手法では,42の草本群落と11の低木群落が分類され,そのほとんどが既報告の植物社会学的植生単位に対応していた. 一方,ISOPAMは同じデータセットを自動的に16の植生単位に分類した.両者は,データ数の多い主要な群落ではよく一致したが,データが少ない植物群落は他の植生単位に統合され,ISOPAMでは分類されなかった.ISOPAMなどの自動分類手法は,大規模なデータセットに対して大局的なパターンを分類するのには適しているが,データ数の少ない群落や外れ値の検出は難しいと考えられた.大規模なデータを精度良く効率的に分類するには,植物社会学的に識別された調査データをトレーニングデータとした教師付分類手法の開発と,ラベル付き植生調査データの蓄積が必要である.

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