Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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原著
日本近海で採集されたベケリケボリ属の1新種とコボレバケボリ属のタイプ種の選定
淤見 慶宏クローバー P.
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2005 年 63 巻 3-4 号 p. 101-108

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抄録

小笠原群島と紀伊半島沖からベケリケボリ属Primovulaの1新種が発見されたので記載する。また,Ovulum dorsuosum Hindsが誤同定によりコボレバケボリ属Dentiovulaのタイプ種となっている事が確認されたので,新たなコボレバケボリ属のタイプ種を認定し,正しいタイプ種に基づいた再定義を与え,この属に含まれると考えられる種類を挙げる。Primovula oryza n.sp.ヤエバケボリ(新称:八重歯毛彫)貝殻は小型,偏菱形で後端から約1/3位置が最大幅で角ばり,前端に向かって緩やかに細くなる。背面全体に約100本の螺状脈が等間隔で刻まれる。前端は発達してアーチ状になり,先端はやや角張る。後端は急速にせばまり嘴状に突き出る。右側面は滑層が発達して鍔状になり,背面から見ると後端近くで棘状の2歯が外方向に突出する。貝殻は白色で背面後方に1本の不明瞭な淡黄色が横切り,背面前部分の中心からやや右に微かに見える程度の淡黄色の線状紋が蛇行して縦走し,さらに細い黄色線が側縁に沿って走り殻を囲む。腹面は滑層が厚く,表面は滑らかである。内唇は発達し,歯は無く,殻口側に滑層を伴った段差がある。内唇の螺状脈は殻口部分にのみ見られる。殻口は狭いが,前溝で広くなる。長い内唇縦溝は表面が滑らかで,殻中間部で一旦幅が狭くなるが,前端に向かって緩やかに幅広くなり軸唇窩のようになる。三角形の滑層瘤(funiculum)には2本の皺があり,切立ち,後溝内唇襞に連続する。後溝は嘴状で,縦軸方向に浅く溝が通る。外唇は広く偏平で,前半部には歯が無いが,後方には6歯ある。殻口歯列は,各歯広い間隔で配置され,後方に向かって長くなり,最後の2歯は外唇縁から突き出る。殻長9.0mm,殻幅4.8mm,背高4.1mm(ホロタイプ)。タイプ産地:小笠原群島巽出(父島と母島の中間海域),水深180m。分布:紀伊半島南部沖,伊豆七島黒瀬,小笠原群島本種貝殻には主に7つの特徴が見られる。殻形態が角張った菱形となる点,後端が嘴状になる点,明確な螺肋が刻まれる点,貝殻は白色で有る点,側縁に沿って細い黄線が入る点,腹面が厚い滑層で覆われ平滑になる点,外唇の後端にのみ数本の棘状の歯が形成される点である。殻の形態はOvulum dorsuosum Hindsに似るが,前端が鋸歯状にならない点,後端が嘴状になる点,背面の螺状脈が粗い点や背面の彩色が異なる点で区別される。Genus Dentiovula Habe,1961コボレバケボリ属Type species here designated: Primovula colobica Azuma&Gate,1971定義:貝殻は小型,偏菱形でやや角張り,後端に複数の棘状突起が形成される。背面には多数の螺状脈が刻まれる。内唇は丸みを帯び,後溝近くに三角形の滑層瘤が形成される。外唇は後半部に歯列が形成される。軟体部は頭部・外套膜・足部共に小斑点が散在する。外套膜はイソギンチャク状の小突起がある。触角は先端が細くなり,中間部は濃い色に彩色される。コボレバケボリ属に含まれる種類:Primovula colobica Azuma &Gate,1971,Dentiovula eizoi Gate&Azuma,1973,D.clava Habe,1991,D.masaoi Gate,1973,D.parvita Azuma,1974,D.spectabilis Gate,1975以上6種。

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© 2005 日本貝類学会
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