Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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原著
ジャワ島で採集されたPatelloida profundaグループの1新種
中野 智之アスワン小澤 智生
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2005 年 64 巻 1-2 号 p. 31-38

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抄録

2004年10月にインドネシアのジャワ島西部においてカサガイ類の調査・採集を行い,1未記載種を含む3科4属9種を確認した。この未記載種の存在は,Lindberg & Vermeij (1985)によって報告されていたものの,軟体部の標本がなかったために新種記載が保留されていた。本研究において,殻形態の比較,および歯舌の観察を行ったところ,新種である事を認めたので,Sedekan Beach, Karang Hawu Beach, Pelabuan Ratuの3地点において採集した標本を基に,記載する。また,本地域からのコガモガサLottia luchuana (Pilsbry, 1901),およびヨメガカサCellana toreuma (Reeve, 1854)の報告は新記録である。Patelloida javanica n. sp.ジャワガサ(新種・新称)殻は円形に近いが,やや縦長の個体も存在する。殻高は高く,殻頂はほぼ中央に位置する個体から,やや前寄りの個体まで変異がある。殻頂は背側に高く垂直に突出する。外表面の色は黄色味を帯びた灰白色で,薄い黄色もしくは赤色の条線を持つ。表面彫刻は多数の放射肋からなり,一次肋と二次肋がほぼ規則的に交互に交わる。殻は全体的に厚い。内面は淡橙色から橙黄色で光沢を持ち,筋肉痕から内側は光沢を持たない白色を呈する。殻体構造は稜柱構造(M+2層),同心円状交差板構造(M+1層),貝殻筋付着層(M層),放射状交差板構造(M-1層)の4殻層で構成される。歯舌は同じ大きさの3対の太い側歯と2対の細長い縁歯からなる。タイプ標本:ホロタイプ,12.7×10.5×5.7mm, NSMT-Mo 73688。パラタイプ1, 13.3×10.1×5.8mm, NSMT-Mo 73689,パラタイプ2, 12.2×9.7×5.4mm, NSMT-Mo 73690,パラタイプ3, GLITBL-Mo 01001, 9.1×8.1×4.9mm。タイプ産地:セデカンビーチ,ジャワ島,インドネシア(06°52.9′S,106°05′E)。

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© 2005 日本貝類学会
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