Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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原著
日本産ナガニシ属の研究II : ミガキナガニシとゲンコツナガニシ(新称)および1新種を含む太平洋産近似種
カロモンスナイダー
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2006 年 65 巻 3 号 p. 177-191

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抄録

日本産ナガニシ属に関する再検討の第2報として,ミガキナガニシとしばしばそれに混同されてきた種類について検討を行った。従来日本の文献ではミガキナガニシはFusinus undatus similis (Baird, 1873)に固定されることが多かったが,タイプ標本や原記載の図,および日本および太平洋の各地から採集された標本を詳細に調べた結果, Fusinus undatus(Gmelin, 1791)とFusinus similis(Gmelin, 1791)は明らかに独立した別種であり,ミガキナガニシは前者に該当することが明らかになった。また,ハワイからFusinus undatusとして報告されていた種類は,これらとは別の未記載種であることが明らかとなったため,新種Fusinus mauiensisとして記載した。さらに,これらミガキナガニシ種群と形態的に類似したF. galatheae Powell, 1967, F. bountyi Rehder & Wilson, 1975, F. genticus (Iredale, 1936), F. sandvichensis(Sowerby III, 1880), F. michaelrodgersi Goodwin, 2001とF. midwayensis Kosuge, 1979についても図示し,比較を行った。Fusinus undatus (Gmelin, 1791) ミガキナガニシ 殻はこの属としては中型(17個体の平均殻長170mm), 厚く堅固で重い。殻口はやや小さく,水管はあまり後ろへ反り返らない。縦肋は太く板状で,通常体層の底部まで連続する。殻表は淡黄褐色で平滑であるが,日本産の新鮮な個体では褐色の比較的厚い殻皮で被われる。分布:紀伊半島以南,フィリピン〜ニューカレドニア,パラオ,タヒチ,マルケサスからハワイ。Fusinus similis(Baird, 1873) ゲンコツナガニシ(新称) ミガキナガニシに殻形やサイズ(12個体の平均殻長162mm)は似るが,殻がやや薄く軽い。水管の反り返りはより強い。縦肋はミガキナガニシよりも弱く,肩部に結節列を形成するのみで,殻底に達しない。また,体層の背面で弱まる。分布:紀伊半島以南,フィリピンを経てニューカレドニアまで。Fusinus mauiensis n. sp. マウイナガニシ(新種・新称) ミガキナガニシに近似するが,やや小型であること(7個体の平均殼長158mm),殼が極めて厚く重く,殼長あたりの重量が約2倍であること,水管の基部が太く,また縦肋が肩部で著しく発達することなどで形態的に区別される。分布:タイプ産地(ハワイ,マウイ島)からしか知られていない。

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© 2006 日本貝類学会
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