Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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原著
日本近海で採集されたベケリケボリ属の1新種
淤見 慶宏
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2007 年 66 巻 1-2 号 p. 11-17

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抄録

小笠原群島,スミス列岩,鹿児島県沖,沖縄近海のサンゴ網により採集されたアカサンゴに付着していたウミウサギ科ベケリケボリ属の1新種を記載する。また,記載に伴い,属の分類定義に混乱の見られたPseudosimnia Schilder, 1927イロガワリケボリ属をPrimovula Thiele, 1925ベケリケボリ属のシノニムとした。Primovula luna n. sp.ツキヨミケボリ(新称:月夜見毛彫)殻長6.3〜10.3mm。貝殻は丸みのある亜紡錘形で後端が良く発達する,背面には明確な横螺条が刻まる, 2-3本の皺がある三角形で大型の滑層瘤(funiculum)を形成する,後溝は末端で広がり縦軸方向に抜けている,内唇縦溝から軸唇窩が著しく発達し殻口が狭くなる,外唇が広く偏平である,殻色は薄桃色から赤色で背面中央に大型の白色楕円紋があるなどの特徴をもつ。シカマキヌハダヅツミPrimovula shikamai (Cate, 1973)に似るが,シカマキヌハダヅツミは殻色が白色である点,内唇縦溝と軸唇窩が発達せず殻口が広い点,滑層瘤が小型である点,外唇が狭い点,軸唇末端襞がねじれる点で異なる。通常,本種成貝は螺条が背面側のみ明確に刻まれ,軸唇は滑層に覆われ滑らかになる。しかし,成月になっても腹面倒が滑層に覆われず,螺条が殻口まで明確に残る個体もある。タイプ標本:ホロタイプ, NSMT-Mo,殻長6.9mm。パラタイプNo.1, NSMT-Mo,殻長7.5mm。パラタイプNo.2, NSMT-Mo,殻長6.3mm。パラタイプNo.3, NSMT-Mo,殻長7.1mm。パラタイプNo.4, NSMT-Mo,殻長10.3mm。パラタイプNo.5, NSMT-Mo,殻長7.6mm。パラタイプNo.6, NSMT-Mo,殻長8.0mm。パラタイプNo.7, NSMT-Mo,殻長8.6mm。パラタイプNo.8, NSMT-Mo,殻長8.6mm。タイプ産地:小笠原群島巽出(父島と母島の中間海域),水深180m。分布:鹿児島県沖,沖縄近海,スミス列岩,小笠原群島巽出。水深180-300m。寄生宿主:アカサンゴCorallium japonicum Kishinouye。

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© 2007 日本貝類学会
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