Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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原著
日本海溝および千島海溝海側斜面から得られたホウシュエビス科腹足類の1新種,ハクホウリュウグウエビス
栗原 行人太田 秀
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2008 年 66 巻 3-4 号 p. 113-118

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抄録

東京大学海洋研究所の調査船白鳳丸KH-01-2次航海にて日本海溝北部および千島海溝南部の海溝海側斜面の水深5473-5762mより得られたホウシュエビス科の1新種, Basilissopsis hakuhoae n. sp. (ハクホウリュウグウエビス:和名新称)を記載した。本新種は本科としては比較的大型かつ脆弱な殻を持つこと,周縁に2本の螺肋を持つこと,螺層中央のやや下位に1螺肋を持つことから本科の既知種とは明らかに異なっている。こうした形質の組み合わせは本科において類例がなく,属位は暫定的なものである。本新種は殻の外形と彫刻パターンの点ではニュージーランドの漸深海帯から知られるBasilissopsis regina (Marshall, 1983)といったBasilissopsis属およびAncistrobasis属の種に類似するが, Basilissopsis属およびAncistrobasis属の種は,より小型で頑丈な殻を持つこと,1本の螺肋を伴う周縁あるいは丸い周縁を持つこと,より顕著な表面彫刻を持つこと,の3点で本新種とは異なる。ミッドウェー付近の北太平洋の深海帯から知られるRotellenzia lampra (Watson, 1879)は2本の螺肋のある周縁を伴う比較的大型で脆弱な殻を持つ点で本新種に似るが,より扁平な殻形と不明瞭な表面彫刻を持つことから本新種とは異なる。伊豆諸島鳥島沖の漸深海帯から知られるソウヨウリュウグウエビスBasilissa soyoae Okutani, 1964は,殻が小型であること,肩部および周縁にそれぞれ1本づつの竜骨を持つこと,および軸唇の下方に明瞭な牙状突起を持つこと,の3点から本新種とは容易に区別できる。

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© 2008 日本貝類学会
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