Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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原著
タイおよびアンダマン諸島から採集された3つの成長段階を持ったナガニシ属の新種
カロモン P.スナイダー M.A.
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2008 年 66 巻 3-4 号 p. 119-126

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抄録

フィラデルフィア自然科学アカデミーに勤務していた故R. A. Abbott博士は1963年に国際インド洋調査の一環としてタイ・プーケット島を訪れた際に,同島沖合いで操業していた錫の採掘船によって採集された多数のナガニシ属の1種の標本を入手した。この標本はFusinus spectrum (Adams & Reeve, 1848)に同定され,一部はアメリカ国立自然史博物館やハーバード大学比較動物学博物館に分割寄贈された。F. spectrumはパナマ産の明らかな別種であり,これらの標本,およびアンダマン島から採集されたもう1個体を詳しく検討した結果,新種であることが明らかとなったので記載する。Fusinus stannum n. sp.アンダマンナガニシ(新種・新称)殻はナガニシ属としては中型の大きさ(32個体の平均殻高92.7mm)。細長く,水管は長く伸びてやや湾曲する。彫刻は成長段階によって明瞭に異なり,殻頂側の最初の3-4層では強い縦肋が顕著で,細い螺肋と交わる。それに続く螺層では,縦肋は消失し,替わりに規則的に並ぶ鋭い成長脈が現れる。この状態(第2相)はすべての個体に見られたが,数層で終わる場合や次体層まで続く場合など,個体によってその長さが異なる。ほとんどの個体では最後の数層に太く丸みのある縦肋が再び現れ,体層では周縁は螺肋と交わって鋭く角張る。本種は体層周縁に顕著な瘤の並んだ強い角をめぐらすことで,これまで記載されている種類の中ではインド洋から記載されたFusinus malhaensis Hadorn, Fraussen & Bondarev, 2001と,ニュー・カレドニアから記載されたF. laviniae Snyder & Hadorn, 2006に最も近似するが,前者とは長く湾曲する水管を持つことや,成殻全体に強い螺肋を持つこと,後者とはよく膨れた螺層に強い螺肋を持つこと,それに何より3つの明瞭な成長段階を示すことで他のあらゆる種類と容易に区別される。タイプ標本:ホロタイプ110.4mm SL, ANSP 286623。パラタイプ,フィラデルフィア自然科学アカデミー,アメリカ国立自然史博物館,ハーバード大学比較動物学博物館に所蔵。タイプ産地:タイ,プーケット島沖水深24m。錫を含んだ砂中0.3-1.8mの深さに埋まる。分布:アンダマン海のタイ・プーケット沖,およびアンダマン・ニコバル諸島。

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© 2008 日本貝類学会
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