Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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短報
日本産ウミウサギガイ科貝類の1新種クロマルケボリの記載
淤見 慶宏
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2008 年 67 巻 1-2 号 p. 85-88

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抄録

房総半島,三浦半島,紀伊半島沖の水深 15 ~70 mで発見されたベケリケボリ属の 1 種の貝殻形態,軟体部外部形態,歯舌を精査したところ,新種であることが確認されたので,クロマルケボリ(黒丸毛彫)Primovula panthera n. sp.(新称)として記載する。本種はトガリアヤメケボリ P. cuspis に近似するが,殻の丸みが強い点,後端が半円錐形に尖る点,腹面が膨らみ老成しても殆ど滑層に覆われない点,軸襞が形成されない点,滑層瘤が小型な点,末端襞がねじれ斜めに長く発達する点,殻両端が橙色に彩色されない点など殻形態から区別される。また,外套膜や足部が黄色地に黒斑が散る彩色となり,触角が黒色で先端が白色になるなど軟体部からも区別される。歯舌形態も異なり,中歯は歯先数が少なく,中心の大歯尖を対称にして左右均一に小歯尖が形成される点,内・外縁歯の先端が指状に膨らむ点で異なる。本種はベケリケボリP. beckeri にも似るが,外唇が幅広い点,外唇歯が粗い点,内唇縦溝と軸唇窩が発達する点,後水管溝が後端に向かって斜め左方向に開口する点,背面に白色横帯が入らず,前後端も橙色に彩色されない点で異なる。
タイプ標本:ホロタイプ,NSMT-Mo 76772,殻長 8.3 mm。
タイプ産地:千葉県富津市明鐘岬沖,水深 15-20 m。
分布:房総半島,三浦半島,紀伊半島沖,水深 15-70 m。
寄生宿主:ウミトサカ科ミナベトサカ属の 1 種。

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