Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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原著
カラマツガイ2型の遺伝的分化
横川 浩治石川 裕濱村 陽一
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2010 年 68 巻 3-4 号 p. 139-149

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抄録

カラマツガイSiphonaria japonicaは日本各地の海岸の岩礁帯に生息する普通種だが,殻が大きくて殻高が高い型(高頂型)と小型で殻高が低い型(低頂型)の2型が存在する。本研究ではこれら2型についてアイソザイム系遺伝子による遺伝的差異を調べ,両者の実体を明らかにすることを試みた。用いた材料は,高頂型は香川県高松市産の20個体,広島県呉市産の29個体,愛媛県愛南町産の16個体の3標本群,低頂型は広島県呉市産の45個体,愛媛県愛南町産の16個体の2標本群であり,外群として沖縄県西表島産のコウダカカラマツS. laciniosa 13個体,愛媛県愛南町産のシロカラマツS. acmaeoides 16個体も合わせて調べた。
アイソザイム分析の結果,高頂型と低頂型に共通して17酵素を検出し計26遺伝子座を推定したが,両者の遺伝子組成は著しく相違し,18遺伝子座で対立遺伝子が完全置換かそれに近い状態であった。各標本群の遺伝子頻度からNeiの遺伝的距離(D値)を計算したところ,高頂型間のD値は0.0060~0.0126,低頂型間のそれは0.0181とかなり大きく,いずれも地域による遺伝的分化が大きかった。一方,高頂型と低頂型の間のD値は1.3882~1.5114となり,一般的な生物の種間の水準を超えて属間の水準に達していた。また2型間のD値は高頂型とコウダカカラマツとの間のD値よりも大きく,両者の遺伝的分化はカラマツガイ科既知種の種間水準より大きいことが示された。以上の結果から,カラマツガイの高頂型と低頂型は明らかに別種であるものと思われ,今後の分類学的整理が望まれる。

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