Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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短報
大分県の石灰岩露頭から得られたハブタエムシオイ(新亜種)
湊 宏
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2012 年 70 巻 1-4 号 p. 49-52

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抄録

大分県においてムシオイガイ亜科貝類はこれまで5種が報告されていたが,大分県南部の石灰岩地帯から新たに未記載の新亜種を確認したのでここに記載をした。
Chamalycaeus takahashii muroharai n. subsp.ハブタエムシオイ(新亜種,新称)
貝殻は本属の中で大形(8個体の平均殻長径4.9mm),クリーム状の白色を呈し,その螺塔は低円錐形,約4.5層を数える。螺管は微かに深い縫合のために円く膨らみ,殻頂から殻口に向けて緩やかに太くなる。胎殻は1.5層,平滑で光沢があり,不透明な白色を呈する。続く螺層からは数多くの細かい糸状脈が殻表を覆う。ウジ虫状の呼吸器管は体層の縫合に沿って後方へ横たわっている。体層の終部の呼吸器管を派生する付近の括れはむしろ弱く,殻口背部には顕著な段差がある。臍孔は殻径の1/3ほどに開き,殻底からはすべての螺層がみえる。殻口は傾き,ほとんど円形。その殻口縁は全縁で円く,著しく肥厚して広がって反曲する。蓋は円くて多旋型,角質で薄い。またその外面側の中央部は窪むが,内面側は微かに膨らんでその中央部には乳頭状の小さな突起がある。
タイプ標本:ホロタイプ,NSMT-Mo 77464,殻高2.1 mm,殻径5.0 mm。
タイプ産地:大分県佐伯市本匠風戸・蝙蝠洞付近の石灰岩地(露頭)。
分布:大分県(タイプ産地以外から記録がない)。
比較:本新亜種は貝殻の背面外観と大きさから,大分県小半洞産のオナガラムシオイChamalycaeustakahashii takahashii Habe,1976 に近似するが,それよりもやや大きいこと,殻口背後には顕著な段差がある(オナガラムシオイでは殻口背後が隆起状突起になる)ことで識別される。また同所的に分布するハリマムシオイ Chamalycaeus japonicas(Martens,1865)は本新亜種に比べてはるかに小形(殻径3.7 mm)であること,殻口背面には明瞭な段差がないことで異なる。さらに大分県,宮崎県,熊本県に分布するタカチホムシオイ Chamalycaeusnishii Minato,2005 は,殻口背部がかすかに膨らむこと,貝殻の大きさ(殻径3.84 mm)などから,本新亞種との識別は容易である。本新亞種は死殻8個体のみ採取されたが,1個体(パラタイプ #1)の貝殻内部には蓋が残存していた。生息地はオナガラムシオイのタイプ産地からわずか3 km しか離れていない。

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