Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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短報
タヒチ産ソビエツブ科クチビロガイ属の1新種
加瀬 友喜 Jean Letourneux
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2013 年 71 巻 3-4 号 p. 220-222

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抄録

タヒチ島Arua沖水深40 m の海底洞窟からVincent Wargnier氏によって採取されたソビエツブ科クチビロガイ属の1新種を記載した。
Microliotia wargnieri n. sp. トウガタクチビロガイ(新種・新称)
殻は微小で細長いサザエ形を示し,白色。螺管は8階を超え,周辺部は強く角張り,縫合は深い。胎殻は平滑で約1階の胎殻Iと顆粒状の螺脈で覆われる約1.5階の胎殻IIからなり,sinusigera notchは深く湾入する。殻表面彫刻は粗く,体層には16本の縦肋と,縫合付近と殻底にはそれぞれ2本ある。臍穴はやや広く開き,深く,周辺は鋭い螺肋で縁取られる。殻口は真円形で,強い縁取りがある。殻口周辺部は拡がり,数本の弱い同心円状肋と9ないし10本の放射状肋がある。殻高 2.79mm,殻幅 1.98 mm(ホロタイプ)。
模式産地:フランス領ポリネシア,タヒチ島Arua沖の海底洞窟“Cave Arua”,水深 40 m。
分布:フランス領ポリネシア,タヒチ島。
クチビロガイ属は現在10種が知られ,殻形態や彫刻は変異に富む。本種は螺管が角張り,属のタイプ種とはかなり異なる。しかし,螺管第一層は角張り,殻底を除く螺管表面は螺肋と縦肋が交差して格子状となり,広く拡がる殻口周辺部には同心円肋と放射肋があることから,本種をクチビロガイ属に位置づけた。本種はハワイ・マウイ島産のアラボリクチビロガイに似るが,螺管が著しく角張ること,肩部の螺肋が縦肋と交差して棘状になること,胎殻の巻き数が多い点などで容易に区別できる。

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