Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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短報
紀伊山地の北部で見つかったシロモリサキギセル(新種)
湊 宏
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2014 年 72 巻 1-4 号 p. 131-134

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抄録

大阪府金剛山から報告されていたキセルガイ科貝類は,さらに和歌山県と奈良県にも分布していることがわかったので,既知種と比較した結果,未記載種と確認したのでここに記載をした。
Tyranophaedusa (Aulacophaedusa) matsumurai n. sp.シロモリサキギセル(新種)
貝殻は本亜属の中では大形(平均殻長12.75 mm,平均殻径2.95 mm, 13個体),殻表は淡黄白色,またはクリーム系白色,左巻きで棍棒状の高円錐形状を呈する。螺層は10.5層で,各層はわずかに膨れる。殻表には細かい成長脈が現れる。胎殻は2層,平滑で鈍形で,初層は2層,大きくて円筒形状である。殻口はむしろ小さく,洋梨形状。殻口縁は白色,肥厚して外に向かって反曲する。上板は顕著で殻口縁に達し,内部にある螺状板と連結している。上板の右側の殻口縁には微細な切れ込みが存在している。下板は後退的で,殻口を傾けるとかすかに見える。下軸板は深く潜在して,殻口からはまったく見えない。主襞は側位で多少は短く,殻口からは傾けるとかろうじてその終端がみえる。上腔襞がない。月状襞は良く発達して側位に位置して,その上部は弧状に曲がる。月状襞の下部は短い下腔襞に連結している。閉弁は細長く,その先端部は多少尖っている。そして内側の柄状部の基部に浅い切れ込みがある。生殖器の陰茎と陰茎鞘が短大であること,盲管と受精嚢部の長さの比較では,前者の方が長いことなどが種的な特徴である。
タイプ標本:ホロタイプ, NSMT-Mo 78631, 殻高12.4 mm,殻径3.0 mm。
タイプ産地:大阪府千早赤坂村・金剛山。
分布:大阪府:金剛山。和歌山県:紀美野町・箕六, 高野町湯川。奈良県:宇陀市・室生寺,高取町;高取城跡。
比較:本新種は徳島県城王山から記載され,徳島県北部と香川県南部に分布するモリサキギセルT. (A.) morisakii (Kuroda & Abe, 1980) に似るが,殻色が淡黄白色か,またはクリーム系白色であること,貝殻はずんぐりしている殻形であること,主襞が短いことなどで容易に識別される。タイプ産地において,本新種とともに同所的に出現するホソヒメギセル T. (A.) gracilispira (Möllendorff, 1882) は,貝殻がより小形(殻高9 mm)で,月状襞を欠くことで異なる。さらに兵庫県淡路島から記載されたクロチビギセル T. (A.) aulacophora (Pilsbry, 1900) は本新種に似ているが,殻色が暗赤褐色であること,貝殻サイズがより小さい(殻高9.5~11 mm)こと,プリカの形態の違いで相違する。なお,本種は湊・室原(2011)でも取り上げられ,モリサキギセル近似種B(シロモリサキギセル:新称)として提唱されたことがある。

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© 2016 日本貝類学会
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