Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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短報
東京湾奥部におけるエドガワミズゴマツボの生活史特性
多々良 有紀
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2015 年 73 巻 1-2 号 p. 71-74

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抄録

エドガワミズゴマツボは,内湾河口部の潮間帯の泥底に生息する殻長約 2.5 mm の小型腹足類である。本報告は本種の季節変動や発生等の生活史特性を得ることを目的に,2005年3月から2006年7月にタイプ産地(江戸川放水路)の近隣である新浜湖 (千葉県市川市行徳鳥獣保護区)において調査・観察を行った結果である。
殻長の季節変化を示したヒストグラムは,年間を通じて存在する殻長約2.5 mmにモードを持つ成貝グループと,7~10月に出現する殻長2 mm以下で殻口未形成の幼貝から成るグループによって構成されていた。よって,新規加入は主に夏に起こり,短期間で成貝と変わらないサイズに成長することが明らかとなった。今回の調査で得られた最小個体の殻は,殻長0.20 mm,殻径0.25 mm,螺層は約2巻であり,大きさと形状が本種の原殻と一致した。したがって,この最小個体は着底直後の幼貝であるといえる。
本種の飼育中にシャーレの底に縦長約0.1 mmの卵が10~20個線状に並んで産みつけられていた。2日後,この卵から内部の被面子幼生が面盤で内側から卵殻を破壊し,孵化した。この被面子幼生は,殻径0.1 mm,約2/3巻の透明で平滑な殻と,短い触角を持っていた。

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© 2016 日本貝類学会
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