Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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短報
静岡県伊豆半島の中部中新統 湯ヶ島層群産ギンタカハマ近似種Tectus sp. aff. pyramis (Born, 1778)
冨田 進井上 恵介門田 真人佐野 勇人細田 栄作
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2017 年 75 巻 1-4 号 p. 88-92

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抄録

静岡県賀茂郡松崎町江奈に露出する中部中新統湯ヶ島層群桜田層中に狭在する江奈石灰岩からTectus属の化石が産出した。この化石は現生のギンタカハマTectus pyramis(Born, 1778)に,螺層の装飾の様子や,最終巻では螺肋はほぼ消滅し,比較的強い成長脈で装飾されること,底面に多くの細い螺溝があり,殻口内唇の軸柱に瘤があり,臍は閉じ浅いことなどでよく類似する。しかし,幼殻の螺層周縁の突起が弱いので区別できる。本化石は現生種のサラサバテイT. niloticus(Linnaeus, 1767)とはより小型で,比較的に頂角が小さく,螺肋の本数や様子が異なり,周縁がより角張り突起が弱く,軸柱に瘤があり,浅い臍をもつので異なる。現生種のベニシリダカT. conus(Gmelin, 1791)とはやや頂角が大きく,螺肋の本数や様子が異なり,成長しても螺層が丸みを帯びず角張り,軸柱に瘤があり,底面に螺溝があり,浅い臍をもつので異なる。ニュージーランドの第四系産化石や現生種として知られるTectus royanus(Iredale, 1912)とは,本種がより大型で,より頂角が小さく,螺塔が高く,表面装飾が粗いので区別できる。日本のほぼ同時代の地層から産出するT. japonicus Horikoshi in Kobayashi & Horikoshi, 1958とは,本種の方がより大型で,螺肋の本数や様子が異なり,殻口内唇に比較的に大きな瘤があるので区別できる。中期中新世当時の伊豆地塊は本州南方の熱帯西太平洋に位置する火山島であり,本新種はこれまで報告された造礁性サンゴ類やサザエ科の岩礁性巻貝類とともに当時の熱帯岩礁性化石群を特徴づける種といえる。新種であるかどうかは今後の保存の良い資料の追加を待つ。

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© 2017 日本貝類学会
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