Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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短報
南東太平洋・イースター島の 海底洞窟から採取された ソビエツブ科1新種
加瀬 友喜Bret K. Raines
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2017 年 75 巻 1-4 号 p. 99-104

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抄録

イースター島はインド・西太平洋生物地理区の東端に位置し,最も近いピトケーン島から2,200 kmも離れた南東太平洋の孤島である。この島からは200種を超える貝類の報告があり,そのうちの37%の種が固有種である。本報告では,同島の水深15 mの海底洞窟から採取されたソビエツブ科クチビロガイ属1新種を記載し,またアミメクチビロガイ属(新称)の1既知種を再記載した。これらの2種もイースター島の固有種と考えられる。

Microliotia rehderi n. sp. モアイクチビロガイ(新種・新称)

殻高は最大で2.28 mm,リソツボ形,白色。螺層は6階を超え,螺管側面はほぼ平で,螺塔高は殻高の55%を占める。胎殻は平滑で約1階の胎殻Ⅰと顆粒状の螺脈で覆われる胎殻Ⅱからなり,sinusigera notchは深く湾入する。後生層は41/4階,縫合付近で括れるが,縫合は線状を呈し,次体層では3本の螺肋が17本前後の縦肋と交叉し,疣列となる。体層は螺層上部でやや膨らみ,殻底周辺部は角張らず,殻底には3本のやや強い螺肋がある。臍孔は閉じる。殻口は真円形で明瞭な縁取りがあり,周辺部は肥厚して広く拡がり,やや翼状になる。殻高 2.78 mm,殻幅 1.88 mm(ホロタイプ).

模式産地:イースター島 Hanga-Teo沖の海底洞窟,水深15 m。

分布:イースター島。

既知のクチビロガイ属11種の中で,本種はハワイ産のアラボリクチビロガイ(Microliotia hawaiensis Kase, 1998b)に最も近似する。後者とは殻形がより細長いこと,強い螺脈を持つこと,また2階の胎殻(後者は1.25階)を持つことで区別される。Raines(2002)は本種をエニウェトク環礁から知られるAlvaniaTaramelleliacorayi Ladd, 1966に同定するとともに,属位をクチビロガイ属に変更している。一方,Le Renard & Bouchet(2003)は A.(T.)corayi をアミメクチビロガイ属に帰属させており,この種の属位は今後検討の余地がある。M. corayiは本種よりも螺塔が低く,殻底周辺部が角張ること,羅肋と縦肋がより細かいなど,区別が容易である。

Clatrosansonia circumserrata(Raines, 2002)イースターアミメクチビロガイ(新称)

殻は微小で,殻高は最大で1.2 mm,エビスガイ形を呈し,螺塔は低い。螺管は約5階,縫合はやや深い。胎殻は薄いオレンジ色,約1階で滑らかな胎殻Ⅰと螺脈を持つ1.5階の胎殻Ⅱからなり,sinusigera notchは深く湾入する。次体層と体層上部表面は平で螺肋と縦肋が交叉して編み目状を呈し,角張った肩部には太い螺肋があり,縦肋と交わるところはやや棘状となる。殻底は若干膨らみ,約9本の螺脈で覆われる。臍孔は広く開き,周辺は太い螺肋で縁取られる。殻口はほぼ真円形で縁取りがある。外唇は板状で体層から伸びる螺肋に覆われる。

模式産地:イースター島 Hanga-Teo沖の海底洞窟,水深15 m。

分布:イースター島。

本種はReines(2002)によりイースター島からMareleptozoma属の新種として報告されたが,その属位に関しては暫定的なもので,更なる検討が必要であることが指摘されていた。本種の殻形態はアミメクチビロガイ属の属模式であるClatrosansonia philippina(Bandel & Kowalke, 1997)と多くの点で共通しており,この属に位置づけられる。本種は属模式種と比べて弱い縦肋と螺肋を持つこと,体層上の螺肋の数が多いこと,明瞭は縦肋が発達しないこと,臍孔がより広いことなどで区別される。

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© 2017 日本貝類学会
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