貝類学雑誌
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陸生有肺類における神経ペプチドおよび神経伝達物質の心臓搏動作用
高柳 博武田 直邦
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1984 年 43 巻 4 号 p. 363-372

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抄録
本研究は, 陸生有肺類のアフリカマイマイAchatina fulicaおよびミスジマイマイEuhadra peliomphalaを用いて, 神経ペプチドや神経伝達物質類の心臓搏動および口球牽引筋の収縮に対する影響を調べたものである。使用した神経ペプチドは, FMRFアミドとプロクトリン, 神経伝達物質は, セロトニンとオクトパミンである。はじめに, 温度および湿度の変化の心搏数に対する影響について検討した。その結果, いずれの種においても温度の上昇とともに心搏数の増加がみられたが, ミスジマイマイにおいては湿度の上昇も心搏数の増加に影響することが示された。心搏数の増加は, 使用した各物質において各々促進的に作用し, その作用濃度も約10^<-3>Mから10^<-9>Mレベルであったが, オクトパミンだけは, 10^<-5>Mレベル以下では作用が認められなかった。口球牽引筋では, 10^<-9>MレベルからFMRFアミドおよびオクトパミンが類似した強縮を示したが, 後者は立上がりに肩がみられる点が特徴的であった。また, セロトニンでは低濃度において単発的な収縮がみられ, 高濃度になるにつれて強縮に近づく傾向にあった。この点において, FMRFアミドの作用の方がセロトニンと比較して強いと考えられる。プロクトリンは10^<-5>Mおよび10^<-6>Mレベルでわずかな収縮をもたらしたが, その作用は非常に弱かった。以上, 用いたいずれの神経ペプチドや神経伝達物質も, 心臓搏動および口球牽引筋に作用することが明らかになった。また, 作用においては, FMRFアミドの活性が高いことが示された。
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© 1984 日本貝類学会
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