編集委員長の柘植教授より随想のページに寄稿の依頼をうけた. 随想とは思いつくままに感じたことと理解して筆者のビタミン研究の始まりであったB1定量法に関連したいくつかの事項について述べることにしたい. 昭和34年筆者はアリチアミン(商品名アリナミン)の発見者である藤原元典教授が主宰する京都大学医学部衛生学教室に入ることに決めていたので, 当時医師免許を取るために義務付けられていたインターンの時期から教室に出入りしB1の定量方法の薫陶を受けた. その当時のB1定量法はBargerが考案したB1をチオクロムという蛍光物質に変換し, 蛍光の強度を測定する赤血塩酸化法(1935)を藤原教授が改良したBrCN法である. 衛生学教室には日本に最初に輸入されたという蛍光光度計が設置されていた. ヒト血液のB1を測定するには3〜5mlを必要とした. これをメタリン酸により除蛋白し, pH調整後リン酸エステル型のB1類をフリーのB1に変換するため, タカジアスターゼB(三共製, ホスファターゼ作用を有する)を加えて37℃で一夜反応させる.