雑草研究
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原著論文
秋田県における水田由来のイヌビエ(Echinochloa crus-galli (L.) Beauv. var. crus-galli)種子の出芽に対する湛水の影響
松嶋 賢一森田 弘彦
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2016 年 61 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

寒冷地の水稲湛水直播栽培においてイヌビエを適切に防除するためには,イネ播種後の水田の水条件とイヌビエの出芽との関連性を的確に把握する必要がある。本研究ではイヌビエ種子の出芽に対する湛水の影響を圃場において検討した。秋田県内の水田13地点から採種した種子を湛水深2 cmの湛水区と同0 cmの落水区の2条件で5月中旬と6月中旬にプラスチック容器に詰めた土壌に播種を行い,出芽数を追跡した。最終出芽率は5月中旬播種では4採種地の,6月中旬播種では1採種地の種子で落水区に比べ湛水区で低かった。平均出芽日数,出芽斉一性値は播種時期にかかわらず全採種地の種子で落水区に比べ湛水区で大きい値を示した。また,湛水区では6月中旬播種に比べ5月中旬播種で平均出芽日数,出芽斉一性値とも大きかった。一方,秋田県内の水稲直播栽培圃場3地点から採種した種子をポットに詰めた土壌に播種後湛水し,その20および30日目に落水した区では出芽率が落水後に急激に上昇した。イヌビエは浅い湛水条件下で出芽可能であるものの,出芽期間が長期化して不斉一となり,それが低温ほど助長され,さらには落水が契機となって出芽が促進されることが明らかになった。

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© 2016 日本雑草学会
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