抄録
東北地域の水田に発生が多いイヌホタルイおよびタイワンヤマイについて, 種子の休眠・発芽に及ぼす貯蔵条件および発芽条件の影響を秋田県大曲市産の種子を用いて調査し, 以下の結果を得た。
1) 戸外水田土壌中または5℃湛水土壌中に貯蔵したイヌホタルイ種子の休眠覚醒程度は, 湿潤ろ紙床, 湛水土壌および密栓水中などの発芽床と置床温度条件が異なった条件での発芽率により明確に異なった (第2表)。
2) 種子の休眠覚醒のための湛水土壌中の貯蔵温度は, イヌホタルイ種子では5℃, タイワンヤマイ種子では10℃が最適と考えられた (第1図~第3図)。
3) イヌホタルイ種子およびタイワンヤマイ種子ともに, 湛水土壌中の貯蔵日数の増加に伴って各置床温度条件での発芽率が向上したが, イヌホタルイでは貯蔵180日以降, タイワンヤマイでは貯蔵120日以降は低温 (15℃) での発芽率の向上が顕著であった (第4図, 第5図)。
4) 湛水土壌中における貯蔵温度と発芽温度との間に関連が認められ, イヌホタルイ種子では貯蔵温度5℃では発芽温度域が15~30℃であったが, 貯蔵温度10℃および15℃では発芽温度域がそれぞれ20~30℃, 25~30℃であった (第6図)。一方, タイワンヤマイ種子では貯蔵温度5℃および10℃では発芽温度域が15~30℃, 貯蔵温度20℃では発芽温度域が20~30℃であつた (第7図)。
5) イヌホタルイ種子およびタイワンヤマイ種子ともに水中貯蔵によつて休眠覚醒が進行したが, 同じ貯蔵日数で比較した場合の発芽率は湛水土壌中貯蔵よりも劣る傾向を示した (第3表, 第4表)。
6) イヌホタルイ種子の平均発芽日数は置床温度の高いほど短かったが, 同じ置床温度条件では, 5℃湛水土壌中に貯蔵した日数の長い種子ほど日数が短かつた (第8図, 第5表)。