湿地研究
Online ISSN : 2434-1762
Print ISSN : 2185-4238
日本に見られる鉱質土壌湿原の分布・形成・分類
富田 啓介
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2010 年 1 巻 p. 67-86

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抄録

地表面に泥炭の蓄積が認められない湿原(鉱質土壌湿原)の日本における分布を既往文献に基づいて整理し,成因に基づく分類案を示した.鉱質土壌湿原は中部地方の太平洋側や近畿地方・中国地方の瀬戸内海側の温暖な丘陵地から集中的に報告されているが,少数ながら北海道を含む寒冷地でも報告されている.これらのことから,鉱質土壌湿原の成因は植物遺体の分解を促す温暖な気候だけでなく,泥炭の母材となりうる堆積物を蓄積させにくい水文的・地形的システムも関与している可能性がある.また,通常は泥炭地であっても何らかの理由で地表面に泥炭が存在しない時期が存在する場合もある.このような点を考慮して,地形と水文的特色により鉱質土壌湿原を分類すると,谷壁斜面に流出した地下水が地表面に拡散・流下することで形成される谷壁型,谷底低地や堤間低地などの低地に地下水が収束して形成される谷底型,および泥炭地湿原が一時的に無機土壌に覆われた擬似型に大別できた.

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© 2010 日本湿地学会
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