湿地研究
Online ISSN : 2434-1762
Print ISSN : 2185-4238
野生復帰によるコウノトリの観光資源化とその課題
菊地 直樹
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ジャーナル オープンアクセス

2012 年 2 巻 p. 3-14

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抄録

野生復帰の先進事例であるコウノトリの野生復帰では,地域のさまざまな要素を地域資源化することで,自然再生と地域再生の両立を図る包括的再生が進展している.コウノトリに関心を持つ多数の観光客が訪問するようになり,地域として観光客とどのような関係を創出していくのかという課題が現出している.本稿は,兵庫県立コウノトリの郷公園の来園者へのアンケートを通して,野生復帰によるコウノトリの観光資源化の実態を明らかにした.一般観光客とコウノトリ観光客の特性の差に注目したところ,コウノトリ観光客は阪神の都市圏から日帰りないし1 泊2 日程度の日程で訪問し,コウノトリそのものに関心が集中する傾向にあり,豊岡市ではあまり消費しない特性をもっていることが明らかになった.コウノトリの観光資源化による自然再生と地域再生の両立を図るためには,宿泊客の増加とともに,コウノトリの観光資源の魅力の向上が重要であり,コウノトリを切り口にした地域の自然と文化を体験できるプログラムの設計が課題である.今後,観光の利益の地域への還元と交流の資源化という地域資源をマネジメントする社会的な仕組みづくりが求められている.

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© 2012 日本湿地学会
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