2014 年 5 巻 p. 25-33
水田は湛水期間が長く多様な生物の生息場となる一方,還元環境になりやすいふゆみずたんぼはCH4 の主要な供給源であることが指摘されていた.そこで本研究では,2008 年から2012 年まで北海道美唄市宮島沼周辺早期湛水有機水田(ふゆみずたんぼ)および慣行田においてCH4 やN2O 濃度,栄養塩等の観測を行った.2008 年から毎年観測を行ってきた結果に,更に本研究で観測したふゆみずたんぼにおいて初めて中干しを行った2012 年の観測結果を加え,水田からの温室効果ガスの放出について考察した.2012 年夏に中干しを行った際,観測期間内におけるCH4 放出量は過去の観測結果の5 分の1 以下に抑制され,温暖化への寄与が緩和される結果となった.しかし酸化的環境下でのN2O 生成が懸念され,本研究においては中干し期間でのN2O 放出量は測定できなかったが,非灌漑期における生成からGWP の値を算出すると中干しを行わなかった観測年におけるCH4 のGWP 値よりも約11 倍高い結果となった.