湿地研究
Online ISSN : 2434-1762
Print ISSN : 2185-4238
宮島沼周辺の環境水における病原細菌の挙動
石井  聡 中村 隆光岡部  聡
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キーワード: 水質, 糞便汚染, 病原微生物
ジャーナル オープンアクセス

2016 年 6 巻 p. 19-23

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抄録

宮島沼にはマガンが多数飛来し休息するため,沼の水はマガン糞便に汚染されている可能性がある.そこで本研究では宮島沼からの流出水について,マガン糞便由来の微生物汚染を調べることを目的とした.マイクロ流体工学に基づく定量的遺伝子検出技術を利用して病原微生物遺伝子を定量的に検出した結果,宮島沼流出水から病原性大腸菌,赤痢菌,カンピロバクター,ウェルシュ菌といったヒトに病気を起こしうる微生物が検出された.これらの病原微生物が多く検出される時期は大きく変動し,マガン飛来時に高濃度で検出される傾向にあった.さらにマガン糞便から上記病原微生物が高頻度で検出されたため,マガン糞便がこれらの微生物の汚染源であると推察された.現在のところ,宮島沼流出水を含む農業用水は主に穀物栽培に用いられているので問題は顕在化していないが,今後生食野菜や果物を栽培する際は,病原微生物の存在にも注意する必要があるだろう.

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© 2016 日本湿地学会
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