西部造船会々報
第106回西部造船会例会(西部造船会々報 第106号)
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小型船舶の復原性に関する高速計算法について
*慎 燦益磯野 卓郎山本 啓喬
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p. 000031

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抄録

航海中の船舶が風波浪に遭遇した時、その安全性を考えることは当然のことである。特に漁船は小型であるため相対的にみると激しい風波浪に会う機会が多く、そのような環境の中では特に復原性は重視されなければならない。船舶の風波浪中における安全性を考える上で、復原性は欠かす事のできない重要な事項の一つであるため、基本設計の段階で計算し、安全性の検討・判定に用いている。 復原性の計算方法としては、従来からある_丸1_計算表による方法、_丸2_プラニメータやインテグレータ等を用いる方法、_丸3_正面線図(Body Plan)のオフセットを用いてコンピュータによる計算等があるが、これらのほとんどは各横断面を表す各々の線が滑らかな曲線であるという前提に成り立っている。甲板上の構造物の復原性への寄与等の問題は残されているものの、復原性の計算法は確立されているといっても過言ではない。しかし、張り出し甲板、ナックル部および比較的に大きなバーキール等を有する小型船舶の復原性については一部研究されているものの、一般船舶の復原性計算に用いる計算法で求められている。一般化された復原性曲線を求める方法の中でも、インテグレータを用いる方法は、張り出し甲板、ナックル部やバーキール等がある任意の断面形状であっても、横断面の面積や面積モーメントを求めることはできるが交差曲線を求めるまでには多大な時間と労力を必要とする。一方、オフセット等の入力により、コンピュータを用いて復原性曲線を求める場合は、張り出し甲板、ナックル部およびバーキールの形状影響を正確に計算に取り入れられない問題等がある。小型船舶に関する復原性計算の現状は、必ずしもこのような問題を明らかにした明確な計算方法が示されていない。電算機システムが導入されている造船所では、復原性計算プログラムが完備されており、必要な復原力曲線は、短時間で求めることができるが、小型船舶を建造する造船所では必ずしも復原性計算が満足のいくものになっていない。しかも、安価で計算しようとすると、インテグレータ等を用いたりするので時間がかかりすぎてしまうのが現状である。 本研究は、以上のような現状を打開する方法として、_丸1_断面形状に制限を設けないでどのような形状の断面でも正面線図(Body Plan)さえあれば正確に即入力が可能で、計算ができること、_丸2_正面線図(Body Plan)の入力だけで任意傾斜の復原性計算が可能なこと、_丸3_入力から計算結果を出すまでの時間が従来の計算時間より遥かに短時間で、計算精度が高いこと、を研究目的として実施した。 本研究では、研究目的を達成するための計算アルゴリズムを構築し、それに基づいて十進ベ_-_シックの計算プログラムを開発した。このプログラムを用いると、従来のインテグレータによる計算方法では2日程度かかる復原性計算を、入力用の座標読取り装置を用いて、正面線図(Body Plan)に描かれた各横断面の座標入力から、10種類の傾斜角に対する復原挺の計算結果を出すまでに僅か20分足らずの時間で計算する事ができる。 以上の研究結果から、如何なる形状をした小型船舶の復原性も簡単且つ短時間で計算できることを示した。

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© 2003 公益社団法人日本船舶海洋工学会
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