西部造船会々報
第110回西部造船会例会
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閉塞領域を考慮した船舶の自動航行に関する研究 (第 4 報)
*古川 芳孝貴島 勝郎茨木 洋池田 渉松永 祐樹
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p. 18

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抄録

 近年の海運業界の国際競争激化に伴い,国内の船員雇用数は年々減少傾向にあり,また,船舶の乗員数の少人数化が進むにつれて,乗組員の操船時の作業負担が大きくなってきている。さらに,全乗員数に対する経験の浅い乗員の割合も相対的に増加しているため,船舶航行の安全性の確保や乗員の作業負担の軽減を目的とした操船支援システムに関する研究ならびに自動運航システムに関する研究が多く行われている。一方,Kinematic GPS を利用した測位精度の向上や,IMO における AIS (Automatic Identification System) の搭載義務化の決定により,船舶の完全自動航行システムの実用化が現実味を帯びてきている。 著者らは完全自動航行システム開発の第一段階として,二隻の船舶間の衝突回避問題を対象にファジィ推論を用いて海上衝突予防法に基づく判断・行動を行う衝突回避アルゴリズムを構築し,これまでシミュレーション計算および模型実験により,その有効性について検討を行っている。前報においては,Realtime Kinematic GPS (RTK-GPS) を利用することにより,屋外の広い水域において模型船の運動計測ならびに運動制御を可能とする実験システムの開発を行い,停止船として想定した障害物を回避する問題についてシミュレーション計算と模型実験により衝突回避システムの有効性の検証を行った。その結果,停止船と十分な距離を保ちながら安全に航過することが可能であることを確認したが,停止船を航過した後の航跡がややオーバーシュートする傾向が見られた。また,模型実験を実施したプールのサイズの制限により,停止船を航過した後,初期航路へ戻る過程の計測を行うことができなかった。 そこで本研究においては,停止船として想定した障害物を回避する問題を対象として,前報で構築した停止船を対象とした衝突回避アルゴリズムの改良を行い,シミュレーション計算により各種パラメータが避航運動に及ぼす影響について検討を行った。また,停止船との衝突回避を想定した模型実験により,本研究において提案した避航アルゴリズムに基づいて,停止船との距離を十分保ちつつ安全に航過することが可能であることを確認した。今後は,様々な見合い状況で自船の周囲を航行する複数の船舶を対象として,避航アルゴリズムを拡張していくことが必要である。

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© 2005 公益社団法人日本船舶海洋工学会
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