西部造船会々報
第110回西部造船会例会
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根軌跡法による船舶操縦運動制御システム設計の試み
*岩本 才次
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p. 4

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抄録

 造船所の制御系設計の実務現場では、PID 制御が用いられることが圧倒的に多く、他の制御則が用いられることはほとんどないと言っても過言ではない。多変数制御が困難であるという欠点はあるにしても、PID 制御が重宝される要因は、基本的に制御対象のモデル化が必要ないこと、たかだか P、I、D の 3 つのパラメータを調整することにより実用上差し支えない程度の制御性能が得られること、従って、現場でのゲインチューニングが容易で扱い易いことなどである。しかし、最近の制御性能向上の要求に応えるため、最適制御理論による制御系設計が行われることもある。 最適制御理論は状態フィードバックを施すことによる多くの利点があるにもかかわらず、制御性能とゲインの関係が明確でなく、設計者が満足する応答特性を得るためには、評価関数の重みの組合わせを試行錯誤によって決定する必要がある。従って、現場でのゲインチューニングができず、それが現場で採用する場合の大きな障害の一つとなっている。ゲインと応答特性との定性的な関係が判明すれば、実務現場での最適制御理論採用に明るい見通しを付けることになると考えられる。 著者は、前報において、舵によって回頭角を制御する場合を考え、最適制御理論と同様の多重フィードバックが施された 1 入力 1 出力系に対して、オーバーシュートせずしかも最速応答が得られるゲインの設計法を提案し、またゲインと操縦運動特性との関係を明らかにした。 本論文では、前報と同様、根軌跡を用いた極配置によって、制御仕様の一つに応答速度が指定された時に、それを満足するための制御系設計法について検討し、ゲインと応答速度及び船速との関係を導いた。また、この結果、時不変システムと仮定して設計されたゲインが、時変システムのゲインとして適用できることを示した。

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© 2005 公益社団法人日本船舶海洋工学会
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